2013/12/02

【インサイドスコープ】巨大災害に備えろ! 環境省ががれき処理策に本腰

想定される巨大地震に備える「南海トラフ地震に係る地震防災対策の推進に関する特別措置法」と「首都直下地震対策特別措置法」が11月22日の参院本会議で可決、成立した。政府内でもさまざまな場で、こうした巨大地震に備えた検討が進む。大規模災害への対応で大きな課題として挙がるのが、大量に発生する倒壊した建物のがれきなど災害廃棄物の処理・対応策だ。環境省では、がれき処理が滞って復旧・復興に支障を来さないないよう、あらかじめ処理・対応策を整えるための検討に着手している。


◇具体検討の必要性を認識

 南海トラフ巨大地震では、がれきが最大で東日本大震災の13倍に当たる約2億5000万t、津波堆積物も最大で約5900万tが広範囲に発生すると想定されている。また、首都直下地震でも、最大で東日本大震災の5倍となる約9600万tのがれきが狭い地域に発生し、首都機能がまひして首都機能移転が必要となる可能性すらある。
 このため環境省は、廃棄物分野で国が具体的な対策を検討する必要があると判断。2014年度から新規に巨大災害に備えた廃棄物分野の方策検討業務に取り組むため、2億6000万円を14年度予算の概算要求に盛り込んだ。業務は14、15年度の2カ年計画で実施する。
 これに先駆け、巨大地震への対応策と廃棄物処理施設への防災用設備導入・機材備蓄、体制強化の取り組みの基本的方向をまとめるために、有識者による「巨大地震発生時における災害廃棄物対策検討委員会」(委員長・酒井伸一京大環境安全保健機構付属環境科学センター長)を設置し、10月から議論を始めている。
 検討委の初会合で、井上信治環境副大臣は「東日本大震災のような巨大地震に対して、既存の廃棄物処理システムの延長(余力)だけでは、災害廃棄物を迅速、適正に処理することは困難と考えられる。巨大地震に備え、平時から制度的な対応、具体的な方策を検討し、行動計画をあらかじめ策定することが重要になる」と述べている。検討委は11月29日までに3回開き、2、3回目の会合で関係機関に対する聞き取りを実施した。13年度末に基本的方向を中間報告としてまとめる。
 中間報告策定後の14年度以降は、巨大地震の発生に伴う大量のがれきを円滑に処理するための一連の処理フローを総括的に示したグランドデザインを提示して、国としての行動計画の策定につながる行動指針をまとめる。


◇ブロック単位で考える

 また、国、自治体、廃棄物処理業者などの事業者で構成する地方ブロック単位の協議会を立ち上げて、がれき発生量をそれぞれ推計するほか、地震発生時の対策を議論する。協議会は地方環境事務所がある北海道、東北、関東、中部、近畿、中四国、九州の7ブロックに分け設置する。
 巨大地震時には、がれきを被災地だけでは処理できないと想定されることから、ブロックを越えた「広域処理」のあり方を検討しながら、ブロック単位の行動計画を策定する。
 行動計画策定に当たっては、焼却施設が壊れた際の代替焼却施設の確保、焼却施設を復旧するときの資材調達方法などを検討する。また、ブロックごとに自治体と分担して整備すべき備蓄などの災害廃棄物対応機能や、鉄道や水運など災害廃棄物の広域輸送システムに必要な施設の整備方策も検討する。
 こうした施策に取り組むことで、環境省は巨大災害の発生時でも、がれきを迅速・適正に処理し、早急な復旧・復興につなげる考えだ。あわせて、広域ブロック単位での対策を意識した自治体での事前対策も進むとみられる。
 巨大地震に備えたがれき処理方策の検討は、早ければ早いほうがよい。このため環境省は、政府が近くまとめる経済対策と13年度補正予算案にも、この方策検討を反映させる考えだ。

◇焼却施設も老朽化

 特に補正予算案では、廃棄物処理施設整備を支援する公共事業費の循環型社会形成推進交付金も確保する方針。がれきのうち可燃物は焼却処理するが、廃棄物焼却施設の老朽化が進み、大きな更新需要が発生していることに対応する。廃棄物焼却施設は全国に約1200施設ある。施設耐用年数は20年程度とされる中、築後20年超が406施設、築後30年超が103施設、築後40年超も4施設あるという。
 14年度予算の概算要求・要望額は、13年度予算額の354億円に比べ218億円増の572億円だが、自治体からの施設整備支援要望額は約1100億円にのぼり、要求・要望額と大きな隔たりがある。施設更新が適切にできないと、地域でのごみ処理能力が不足するだけでなく、事故へのリスクも高まる。また、今後検討が本格化する、がれきの処理体制確保にも支障が出ると懸念されている。
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