東京大学建築学専攻アドバンスドデザインスタディーズ(ADS)は1日、東京都文京区の同大学構内で建築家の槇文彦氏、磯崎新氏、原広司氏によるてい談を開いた。「これからの建築理論」をテーマに建築界の現状や建築教育の未来について縦横に語り合った。
槇氏は現在の建築界について、「かつての建築家同士は友人であり、敵でもあった。しかし、1970年代以降、敵も味方もいない状態。自由な状態ではあったが、結果として『理論』が失われた」と指摘した。
磯崎氏は建築理論と建築批評の違いについて触れ、「批評は歴史に根ざした根拠が必要だが、理論は建築家がつくった建築を説明するもの。そもそも根拠はいらない」としながら建築理論が成立しない現状を分析した。
一方、長年にわたって同大学で教鞭を取り、大学教育にかかわってきた原氏は「建築教育は難しい問題を抱えている。しかし、教育の役割は局所的なものを積み上げることで、ある程度共通の基盤を作り上げること」と述べ、大学教育の未来に期待を込めた。
また、槇氏は新国立競技場についても言及。新国立競技場をめぐる議論は自分の望んでいない方向へ進む可能性が強いとしながらも「問題提起することが、これから役に立つのではないか。決定プロセスがはっきりしないまま造られ、それを忘れてしまうことが大問題。なにがわれわれにとって大事なのかを問い続けなくてはならない」と強調し、「建築は普通の人にとって理解しにくいもの。結果はどうあれ、今回の議論を通じて多くの人に建築とは何かを考えてもらいたい」と語った。
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