2014/07/03

【衝撃】度重なる入札不調で取り壊しの危機 丹下健三の香川県立体育館【記者コメ付き】

労務不足や資材価格の高騰などを背景に、公共建築工事の入札不調が全国的に相次ぐ中、3回の公告すべて入札参加者がなかった香川県の県立体育館耐震改修工事が事業中止となった。この間、県は予定価格を約4割増しとするなど不調対策を講じてきたが、建設需要が高まる中、今後の入札のめどが立たないとして事業そのものを取りやめることにした。丹下健三の初期の代表作は9月末で閉館となり、建て替えも含めて検討されることになる。
【執筆者より:四国では大型の入札で不調が相次いでいる。理由の一つとして東日本復興や五輪関連で顕在化している「労務者不足」「資材高騰」の影響がある。さらに合併特例債や補助金による地方自治体の建築ラッシュも続いている。工事の数は多く、コストは上がりつづける。不調となれば、発注者の手続きが長引くが、その間にも高騰は続く。そして、また不調というスパイラルに陥っている。今回の体育館も、当初から適正な積算で入札していれば、あるいは落札できたかもしれない】
 香川県は、入札不調が続いていた県立体育館耐震改修工事の事業を中止することを表明した。2013年10月と12月、ことし1月に入札公告したが、いずれも参加者がなく、不調となっていた。県は「全国的に工事が多く、技術者不足や資材高騰の影響で見積価格と予定価格が合わなかったのではないか」(営繕課)と不調の原因を分析している。体育館は9月末で閉館することになっており、県は建て替えも視野に入れ、今後の方策を検討する。
 県立体育館は1964年に完成した。香川県に縁が深い丹下健三が設計し、県庁舎東館(旧本館・旧東館)と並ぶ初期の代表作の1つとして知られている。
 同体育館は完成から50年が経過し、老朽化が進んでいるため、耐震改修することにした。
 13年10月の1回目の一般競争入札の公告では、応札者がなく不調となった。2回目の12月に公告では、予定価格を5億7888万円(税込み)から5億8968万円(同)に引き上げるとともに、施工実績の要件を緩和したが、応札者がゼロだった。ことし1月の3回目の公告では、予定価格を参考見積書をもとに積算し、約8億1400万円(同)に引き上げたが、応札者はなかった。
 14年度予算にも工事費など事業費11億0400万円を計上したが、五輪関連などの建設業界への需要が高まる中、今後の入札のめどが立たず、事業中止に追い込まれた。
 建設業界の関係者からは「丹下さんが設計した船型のデザインと吊り屋根構造が特徴だが、それゆえに通常の耐震改修よりも難工事になる。採算が合わない」との声があがる。
 規模はRC造3階建て延べ4707㎡。概要は耐震改修がRC造耐震壁設置41カ所、基礎補強と建物周囲への鋼杭打設、外壁、建具改修。屋根改修では、屋根PC接合部の劣化部分補修後炭素繊維シート張り付けなどを予定していた。
 改修設計は丹下都市建築設計が担当した。
建設通信新聞(見本紙をお送りします!)

0 コメント :

コメントを投稿