2014/07/22

【復興現場最前線】1年で劇的変化した三陸沿岸道路を現地リポート

まちづくりなどの事業の一部で、復興の速度が遅いとの指摘がある一方、復興へのリーディングプロジェクトに位置付けられ、異例のスピード感を持って事業が進められている三陸沿岸道路。東北地方整備局南三陸国道事務所が所管する釜石山田道路・大槌地区現場の1年前と今を見比べながら、“スピード感”あふれる現場力を報告する。

伐採木が集積され、斜面に重機が張り付き整地していた急斜面からは吉里吉里側坑口が見える
2013年7月。地元の佐々木組が施工する浪板地区道路改良工事現場のぬかるむ急斜面を徒歩で登り、同区間の主要構造物の1つである浪板高架橋大槌側起点部の山頂から北側を臨むと、樹木と赤茶けた地層が混在する山には、搬出を待つ伐採木が各所に集積され、何台もの重機が斜面に張り付いて整地していた。
 まだ構造物の影もない状況からは、近い将来、大型構造物がどう築造されるのか思い描くことは難しかった。

◆車での移動が可能に

道路改良が行われていた急斜面
あれから1年。急峻な地形は変わらないが、浪板高架橋大槌側山頂部に至る工事用道路が整備されており、車での移動が可能となっていた。1年前と同じ山頂部に降り立ち、北側を臨むと、整備中の工事用道路しかなかった対岸の山腹にトンネルの坑口が見える。大槌第2トンネルの吉里吉里側坑口だ。
 「国道45号大槌地区トンネル工事」(施工=前田建設工業・萬正己所長)の一環として築造される2本のトンネルのうちの1本で、延長は2043m。13年11月から掘削を開始したが、他工事に供出する予定だったズリからヒ素が検出されたため、2カ月半にわたる作業中断を余儀なくされた。工事は6月20日から再開し、掘削延長は143m(7月1日現在)となっている。

◆15年夏の貫通目指す
 これと並行して、7月中に延長256mの大槌第1トンネル掘削にも着手した。14年度中に完了させる予定だ。その後、吉里吉里側からの片押しで進めている第2トンネルの掘削を両押しに切り換え、施工のスピードアップを図る。1日当たり片側約5mを目標に掘り進め、順調にいけば15年夏の貫通を目指す。
 施工に当たっては、ロックボルト打設の際、あらかじめ岩盤の状況を確認する前方探査システムを導入しており、作業の効率化と安全性の確保に効果を発揮している。第2トンネルに比べて地山が軟弱な第1トンネルでは、通常より早く固まる吹付コンクリートを予定するなど、現場の状況に応じた工夫、最適工法を採用する。

◆特殊火薬で振動抑制

大槌第2トンネルの坑口
近隣への配慮にも万全を期している。第2トンネルでは、今後の掘削の進行にあわせて防音扉を二重にするほか、第2トンネル以上に周辺に民家の多い第1トンネルでは、発破の振動を抑える特殊火薬を使用する。
 もともと三陸沿岸道路の整備に関しては、地元の期待が非常に大きく、事業への理解度も極めて高い。そうした相互の信頼関係があるからこそ「近隣の方に迷惑を掛けられない」という工事関係者の思いは強い。
 再び対岸の山頂部から臨むと、大槌第2トンネル坑口の手前には、1年前にはなかった浪板高架橋のA1橋台が築造されている。同高架橋は延長159m。現在は大沢地区橋梁下部工工事(施工=エム・テック)の一環として、橋台2基と橋脚2基を築造している。橋脚には基礎とフーチングが一体となった大口径深礎杭を採用し、コストの低減を図っている。
 同工事ではほかに、浪板橋(38m)と大沢第3橋(71m)の下部工も施工しており、11月末の全体完成を目指す。14年度第4四半期には上部工工事を発注する見通しだ。
 1年後にはさらに劇的な変化を遂げた現場の様子を取材し、レポートする。
建設通信新聞(見本紙をお送りします!)

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