国土交通省が、3月末からエレベーター設備工事価格等情報データベース(DB)の運用を始めた。エレベーター設備工事を発注する国や都道府県・政令市、独立行政法人の工事概要や予定価格などが網羅され、エレベーターの仕様ごとにどういった予定価格や落札価格となったかが分かるようになった。自治体の発注などで見積もりや応札が少ない中、発注の際に予定価格を設定する上で相場観をつかむ参考となっている。
■対象件数は1909件
データベースは、国交省や法務省などの国家機関に加え、都道府県・政令市と都市再生機構、国立大学法人といった独立行政法人を含めた80の発注機関のデータを対象にしている。入力された工事の件数は、2011年1月から13年12月までに契約した工事のうちの1909件。台数にすると、普及型3242台、一般型1487台の情報が搭載された。データベースを作成した国交省が各機関に情報提供を求め、提供を受けた機関にデータベースを配布している。
情報の対象項目は、エレベーター工事の発注年度や工期のほか、工事の発注された地域、受注者など。また、エレベーターの定員や速度などの仕様も対象だ。 そこに、工事発注に当たっての見積書や予定価格、入札価格もあわせて掲載している。 データはエクセルのシートに掲載しており、発注機関ごとに仕様と予定価格を比較したり、見積もり金額と落札額を見比べることが可能だ。 受注者も確認できるため、昇降機メーカーがどういった工事をどの程度落札しているかを把握することもできる。そうした検索は、担当者のエクセルの精通度によって差がでるため、国交省でも分析手法を助言する。
■見積もり価格の判断
データベースのきっかけは、昨年3月にさかのぼる。国会の質疑で、国交省と文部科学省が所管する機関のエレベーター工事の発注に1者応札が頻発しているという指摘があがったのが発端だ。現状をみると、自治体や国立大学が発注の際にエレベーター工事の見積もりを徴集しても1者にとどまったり、応札者も1者のみとなるケースが多くあったことが分かっている。そうなると、見積もり価格と入札価格がかい離する状況もみられ、国会でも「見積もり価格が4億円を超えるエレベーターが、入札したら1億円になったこともある。ということは、本来の見積もり価格とはいったい何なのか」と、適正な競争ができるだけの情報が不足している点が問題視された。
太田昭宏国交相はことし2月の国会で「同じような(仕様の)エレベーターであるのに価格がばらばらであることもある」と問題に同調し、予定価格や落札金額などが分かるデータベースの構築を明言していた。
■事例参考に実態把握
データベースでは、見積もり価格と予定価格の相関関係も把握できるため、指摘された課題への対応も可能になる。発注した自治体で見積もりの情報が少ないとしても、同様の仕様のエレベーター工事を発注した別の機関の事例を参考にすることで、おおよその実態はつかめることになる。
ただ、同様の仕様のエレベーターであるからといって入札価格も一様とはならない。エレベーターの製造工場は本州にしかなく、生産した昇降機を取り置くこともできない。工場のある地域から離れればそれだけコストもかかり、地域による価格の変動なども見込まれる。
データベースには、そうした点にまだ対応しきれていない側面もある。情報を提供した機関は、県営団地や都市機構の団地など住宅が多く、登録されているデータも中層階向けが多数を占める。高層階向けのエレベーターは、建設の絶対数が自治体では少なく、情報量が不足している点は否めない。また、資材価格や労務費の高騰で工事価格が急激に変動する局面の中で、過去3年のデータではその金額を直ちに予定価格に反映できない部分もある。
■相関関係の分析材料
それでも、国交省は「地域や工事の状況で金額は異なっており、データベースは予定価格設定の参考にしたり、相関関係の分析などに活用してもらいたい」と狙いを明かす。各省庁や自治体も含めて価格情報のデータベースを整備したのは「調べたところ、これほど大規模なものは今回が初めて」(鈴木千輝官房官庁営繕部長)。予定価格の設定などにより客観性を高め、競争性を高められるよう活用していく考えだ。
今後も、継続して情報を収集し、データベースを充実させる方針。 14年度は、10月にも各機関に調査票を配布し、15年1月までに回収。データを分析し、 15年度当初から新たな情報を活用できるようにする。 集計する工事件数は前年度の実績から600-700件程度を見込んでいる。
建設通信新聞(見本紙をお送りします!)
■対象件数は1909件
データベースは、国交省や法務省などの国家機関に加え、都道府県・政令市と都市再生機構、国立大学法人といった独立行政法人を含めた80の発注機関のデータを対象にしている。入力された工事の件数は、2011年1月から13年12月までに契約した工事のうちの1909件。台数にすると、普及型3242台、一般型1487台の情報が搭載された。データベースを作成した国交省が各機関に情報提供を求め、提供を受けた機関にデータベースを配布している。
情報の対象項目は、エレベーター工事の発注年度や工期のほか、工事の発注された地域、受注者など。また、エレベーターの定員や速度などの仕様も対象だ。 そこに、工事発注に当たっての見積書や予定価格、入札価格もあわせて掲載している。 データはエクセルのシートに掲載しており、発注機関ごとに仕様と予定価格を比較したり、見積もり金額と落札額を見比べることが可能だ。 受注者も確認できるため、昇降機メーカーがどういった工事をどの程度落札しているかを把握することもできる。そうした検索は、担当者のエクセルの精通度によって差がでるため、国交省でも分析手法を助言する。
■見積もり価格の判断
データベースのきっかけは、昨年3月にさかのぼる。国会の質疑で、国交省と文部科学省が所管する機関のエレベーター工事の発注に1者応札が頻発しているという指摘があがったのが発端だ。現状をみると、自治体や国立大学が発注の際にエレベーター工事の見積もりを徴集しても1者にとどまったり、応札者も1者のみとなるケースが多くあったことが分かっている。そうなると、見積もり価格と入札価格がかい離する状況もみられ、国会でも「見積もり価格が4億円を超えるエレベーターが、入札したら1億円になったこともある。ということは、本来の見積もり価格とはいったい何なのか」と、適正な競争ができるだけの情報が不足している点が問題視された。
太田昭宏国交相はことし2月の国会で「同じような(仕様の)エレベーターであるのに価格がばらばらであることもある」と問題に同調し、予定価格や落札金額などが分かるデータベースの構築を明言していた。
■事例参考に実態把握
データベースでは、見積もり価格と予定価格の相関関係も把握できるため、指摘された課題への対応も可能になる。発注した自治体で見積もりの情報が少ないとしても、同様の仕様のエレベーター工事を発注した別の機関の事例を参考にすることで、おおよその実態はつかめることになる。
ただ、同様の仕様のエレベーターであるからといって入札価格も一様とはならない。エレベーターの製造工場は本州にしかなく、生産した昇降機を取り置くこともできない。工場のある地域から離れればそれだけコストもかかり、地域による価格の変動なども見込まれる。
データベースには、そうした点にまだ対応しきれていない側面もある。情報を提供した機関は、県営団地や都市機構の団地など住宅が多く、登録されているデータも中層階向けが多数を占める。高層階向けのエレベーターは、建設の絶対数が自治体では少なく、情報量が不足している点は否めない。また、資材価格や労務費の高騰で工事価格が急激に変動する局面の中で、過去3年のデータではその金額を直ちに予定価格に反映できない部分もある。
■相関関係の分析材料
それでも、国交省は「地域や工事の状況で金額は異なっており、データベースは予定価格設定の参考にしたり、相関関係の分析などに活用してもらいたい」と狙いを明かす。各省庁や自治体も含めて価格情報のデータベースを整備したのは「調べたところ、これほど大規模なものは今回が初めて」(鈴木千輝官房官庁営繕部長)。予定価格の設定などにより客観性を高め、競争性を高められるよう活用していく考えだ。
今後も、継続して情報を収集し、データベースを充実させる方針。 14年度は、10月にも各機関に調査票を配布し、15年1月までに回収。データを分析し、 15年度当初から新たな情報を活用できるようにする。 集計する工事件数は前年度の実績から600-700件程度を見込んでいる。
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