2014/07/01

【14年賃金】コンサルでベア実施相次ぐ 人材確保へ労働条件改善も

建設コンサルタントなど建設関連業は、納期が年度末の3月に集中しているため、まだ“春闘”の最中という企業もあるが、これまでの妥結状況をみるとベースアップ(ベア)の動きが広がっている。また、新卒の採用状況が景気回復を反映して、昨年までの買い手市場から売り手市場に急変しているため、初任給の引き上げにも積極的に対応する企業が増えている。新規採用だけでなく、他社への流出を防ぐためにも、賃金を中心に処遇改善の企業間競争が激しくなりそうだ。

 東日本大震災の復旧・復興需要によって、建設関連業は受注が急激に拡大、業績が回復したものの、震災需要は短期で終了するという見方が一般的だったため、ベアに踏み切る企業は少なく、需要が再び落ち込んでも削減が容易な賞与や一時金での対応が多かった。
 このムードを一変させたのが、国土交通省の2014年度技術者単価の引き上げだ。設計や測量など全職種平均で前年度比4.74%増を決定、2月1日から適用した。4%以上の伸び率は1993年度以来21年ぶりとなった。建設関連業は人件費の比率が高いため、技術者単価の引き上げは賃金アップへの引き金となった。業界の魅力向上に力を入れている建設コンサルタンツ協会は、2月の常任理事会で「人件費の上昇を含む処遇改善を口頭で要請した」

■八千代はベアに加え正社員化へ道を開く

 こうした流れを受け、ベアの実施を発表する企業が相次いだ。 八千代エンジニヤリングは15年6月期がスタートする7月から、 平均4%強のベアを行うとともに、 人材確保の観点から契約社員の正社員(一般職)化への転換制度導入も打ち出した。
 続いてパシフィックコンサルタンツは、今期(14年9月期)の期首である昨年10月にベア数百円を実施したことに続き、4月からさらに平均1%引き上げを発表した。期中に2回のベア実施となったが、4月からの分はことし10月実施の一部先取りと位置付けている。同社の給与体系は各種手当がなく、基本給に一本化しているため、他社と比べると実質的には約1.5%に相当すると説明している。
 建設技術研究所は、一般職と総合職が3000円、地域一般職が5000円で、組合からの要求に対し満額回答した。ベアは00年に500円引き上げて以来、14年ぶりとなった。夏季賞与は、要求2.0カ月に対し1.6カ月だが、前年と比べ0.25カ月増えた。
 長大は、ベア平均3000円に加え、「手当は切ったところもあるので、復活させることも含めて検討している。10月から実施する」。賞与は営業利益の達成を前提に、年間3カ月支給を予定しているが、業績が好調なため上乗せできる可能性が高いとみている。エイト日本技術開発は、前年度に30歳以下を対象にベアを実施、「今回のような全社的なベアは統合(09年)以来初めて」という。

■工営と長大が来春に初任給1万円アップ


 初任給は、日本工営と長大がともに来年4月に1万円の引き上げを決定している。 オリエンタルコンサルタンツはことし4月に続き、 来年4月もベア分の引き上げを行う。アップの理由は、「優秀な学生を確保するため」 (日本工営)、「市場環境の改善、物価上昇」 (大日本コンサルタント)などを挙げている。
 手当については、日本工営が7月から管理職を対象に、「業績、賃上げの世間動向、職責などを考慮した結果」、平均1万円程度増額する。基礎地盤コンサルタンツは、管理職に付けていなかった資格手当を、技術士の1部門取得が8000円、2部門以上は1万2000円の手当を支給する。
 小泉構造改革や民主党政権による公共事業の削減で、過去に給与カットしたある企業は、「今回のベアでもまだ元の水準に戻っていない」と説明する。人材がすべての建設関連業は、他の企業、他の業種との競争に後れを取らないためにも、賃金を含めたさまざま労働条件の早急な改善が迫られている。
建設通信新聞(見本紙をお送りします!)

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