日本建築構造技術者協会東北支部(JSCA東北、加藤重信支部長)は19日、仙台市青葉区の東京エレクトロンホール宮城でJSCA法人化25周年記念事業東北構造デザイン発表会2014を開いた。初の構造デザインコンテストでは、実務者の部が野本篤史氏(NTTファシリティーズ)の『かもめの翼』、学生部の部では吉川尚哉氏(東北大)の『しるし』がそれぞれ最優秀賞に選ばれた。
【執筆者より:金箱会長が「専門家の常識を打ち破る提案」と称えた最優秀の「しるし」など、特に学生の部で独創的なデザインを実現しようと苦闘した後が伺えた。意匠デザインの賞は数多くあるが、学生が構造デザインに目を向けるきっかけとして広がって欲しい】
同発表会は、構造デザインコンテストのほか、「これからの構造デザインのありかた~震災復興を見据えて」をテーマとするパネルディスカッション、実作やアイデアを紹介する構造デザイン交流会の3部構成で行われた。
このうち、「1万㎡の屋根を支える魅力的なデザイン」をテーマに行われた構造デザインコンテストは、実務者の部に3作品、学生の部には高校生1人を含む6作品が提出された。提案者による発表と会場との質疑応答が行われ、参加者の投票で最優秀が選ばれた。
最優秀となった野本氏の『かもめの翼』は、震災復興を見据えた未来にはばたくかもめをイメージした力学的合理性とファサードが一体となった新しい大空間屋根を提示。キールフレーム(背骨)の両側を50mのサスペンションアーチ構造と、一方向可動の回転すべり支承で支えるハイブリッド構造とし、背骨側の弦材支点に強制変位をかけるストレッチウイング工法で翼を傾斜させることにより、建築的な内部空間の要求に合わせて屋根フレームも構築できるとした。
また、吉川さんの『しるし』は、岩手県陸前高田市の津波浸水区域の境界線上に架ける長さ1000m、幅10mの屋根を提案。張弦梁構造を採用し、梁は端から中心にかけてアーチを描きながらトラスを組み、ヘリウムを充填させた薄い膜で覆うことにより、上向きの浮力で自立を補助させるとした。
続いて行われたパネルディスカッションでは、金箱温春JSCA会長による基調講演「震災を踏まえたこれからの構造デザイン」を受けて、加藤支部長をコーディネーターに、金箱会長のほか、松本純一郎日本建築家協会(JIA)東北支部復興支援委員長、平山浩史大成建設東北支店設計部シニアエンジニア、奥山敦之山下設計東北支社設計監理部主管、井上剛志構造計画代表が加わり、東日本大震災で被害がクローズアップされた非構造部材のあり方などについて意見を交わした。
この中で平山氏と奥山氏、井上氏は、それぞれ震災時の非構造部材の損傷状況などを報告。今回の震災では、躯体などの構造部材に大きな被害を受けた建物は少なかったが、天井などの非構造部材が破壊したことで、建物そのものの安全性を脅かしたケースが見られるとした。
これに対して金箱氏は、「設計者や施工者を含め、非構造部材の地震被害への配慮が足りなかった」と指摘し、構造設計者だけでなく、仕様を決める意匠設計者や施工する現場を含め、それぞれの役割と領域を再確認していくべきだ」と強調した。
加藤氏は、「それぞれが対話しながら、互いの領域を認識することが、建物被害を少なくする一歩となるのではないか」と立場を越えて連携することの重要性を訴えた。
建設通信新聞(見本紙をお送りします!)
【執筆者より:金箱会長が「専門家の常識を打ち破る提案」と称えた最優秀の「しるし」など、特に学生の部で独創的なデザインを実現しようと苦闘した後が伺えた。意匠デザインの賞は数多くあるが、学生が構造デザインに目を向けるきっかけとして広がって欲しい】
同発表会は、構造デザインコンテストのほか、「これからの構造デザインのありかた~震災復興を見据えて」をテーマとするパネルディスカッション、実作やアイデアを紹介する構造デザイン交流会の3部構成で行われた。
このうち、「1万㎡の屋根を支える魅力的なデザイン」をテーマに行われた構造デザインコンテストは、実務者の部に3作品、学生の部には高校生1人を含む6作品が提出された。提案者による発表と会場との質疑応答が行われ、参加者の投票で最優秀が選ばれた。
実務者の部最優秀の野本さん(左) |
学生の部最優秀の吉川さん(左) |
続いて行われたパネルディスカッションでは、金箱温春JSCA会長による基調講演「震災を踏まえたこれからの構造デザイン」を受けて、加藤支部長をコーディネーターに、金箱会長のほか、松本純一郎日本建築家協会(JIA)東北支部復興支援委員長、平山浩史大成建設東北支店設計部シニアエンジニア、奥山敦之山下設計東北支社設計監理部主管、井上剛志構造計画代表が加わり、東日本大震災で被害がクローズアップされた非構造部材のあり方などについて意見を交わした。
この中で平山氏と奥山氏、井上氏は、それぞれ震災時の非構造部材の損傷状況などを報告。今回の震災では、躯体などの構造部材に大きな被害を受けた建物は少なかったが、天井などの非構造部材が破壊したことで、建物そのものの安全性を脅かしたケースが見られるとした。
これに対して金箱氏は、「設計者や施工者を含め、非構造部材の地震被害への配慮が足りなかった」と指摘し、構造設計者だけでなく、仕様を決める意匠設計者や施工する現場を含め、それぞれの役割と領域を再確認していくべきだ」と強調した。
加藤氏は、「それぞれが対話しながら、互いの領域を認識することが、建物被害を少なくする一歩となるのではないか」と立場を越えて連携することの重要性を訴えた。
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