日本建築士事務所協会連合会(日事連、大内達史会長)は16日、水戸市の茨城県民文化センターで全国大会を開いた。大会実行委員長を務めた茨城県建築士事務所協会の横須賀満夫会長は、今回のテーマである『復興の歓び』に、「被災地の復興を祈り願い、そして叶うという思いを込めた」と語った。東日本大震災、鬼怒川の堤防決壊といった災害によって甚大な被害を受けた地で、復興に向けた強い思いや建築設計事務所と地域住民の間で生まれる絆の大切さを全国に訴えた。
「震災を契機に建築設計事務所と地域住民の交わりが生まれた。復興へ協力したことは、建築設計事務所と地域との関係がどうあるべきかを考えるきっかけになった」。大会に先立って会見した横須賀会長は、東日本大震災からの復興をそう振り返った。さらに、大会スローガンに掲げた「彰往考来(しょうおうこうらい)のこころに学ぶ」について、「建築士は建築の設計という生業を通じ、語り継がれる仕事ができることに誇りと歓びを感じなければならない」とその意図を語った。
大内会長も「復興はまだまだ続くが、今大会でこれまでの復興の歓びと災害の怖さを感じてほしい」と大会にかける思いを語った。
建築設計事務所の業務環境にも言及し、「ボランティアだけでは継続的な復興支援はできない。まずは地域に愛される建築設計事務所となり、適正な利益の確保と国民が安心して発注できる環境を整えたい」と建築士と建築設計事務所の資質向上に改めて注力する方針を示した。
式典では、鈴木暎一茨城大名誉教授らが東日本大震災で被災した弘道館の被害状況と復旧過程について講演した後、基調講演として建築家の古谷誠章、妹島和世の両氏が「人びとの集まる、しなやかな建築」をテーマに対談した。
古谷氏は、これまでに手掛けた自身の作品から「時間はかかっても地元の人と協力して何かをつくる活動が設計者と住民の双方にとって良いものになる」という体験を紹介し、人を集める建築には「人々を受け入れる柔軟さが必要になる」と指摘した。
その上で妹島氏が設計を進める日立市の新市庁舎を例に「人々を受け入れ、それぞれが楽しめるしなやかさ」が不可欠になると語った。
妹島氏は、「建築単体にモニュメントのような力があった方が良いという気持ちはある」としながらも、「出入りが自由で、そこを利用する人がそれぞれの使い道を編み出せるのは公共建築でも個人の住宅でも重要な要素だ」と述べた。
そのため、建てることで周囲の街並みを古くさせる「 街から浮いてしまう」建築ではなく、まちとのつながりを重視することで、「 周囲に溶け込み、周囲の環境にも影響を与える建築にしたい」との考えを示した。
古谷氏は、今後の庁舎建築のあり方について、人口減少と情報技術の発達に伴って「庁舎から行政機能がなくなり、人と人をつなぐ場所としての市庁舎が増えるのではないか」とし、庁舎に求められる機能は大きく変化していくと見通した。
妹島氏もまた、建築へのニーズが複雑化する中で「1つの建築ですべての機能を満たそうとするのは無理がある」とし、周囲の環境や都市とつながりを持つことが重要になると指摘した。「(建築にあらゆる機能を持たせることはできないが)行けば誰かがいて、人と話す気になり、そこからいろいろな出会いが生まれる。これからの庁舎建築はそういう場所をつくらなければならない」と強調した。
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「震災を契機に建築設計事務所と地域住民の交わりが生まれた。復興へ協力したことは、建築設計事務所と地域との関係がどうあるべきかを考えるきっかけになった」。大会に先立って会見した横須賀会長は、東日本大震災からの復興をそう振り返った。さらに、大会スローガンに掲げた「彰往考来(しょうおうこうらい)のこころに学ぶ」について、「建築士は建築の設計という生業を通じ、語り継がれる仕事ができることに誇りと歓びを感じなければならない」とその意図を語った。
大内会長も「復興はまだまだ続くが、今大会でこれまでの復興の歓びと災害の怖さを感じてほしい」と大会にかける思いを語った。
建築設計事務所の業務環境にも言及し、「ボランティアだけでは継続的な復興支援はできない。まずは地域に愛される建築設計事務所となり、適正な利益の確保と国民が安心して発注できる環境を整えたい」と建築士と建築設計事務所の資質向上に改めて注力する方針を示した。
式典では、鈴木暎一茨城大名誉教授らが東日本大震災で被災した弘道館の被害状況と復旧過程について講演した後、基調講演として建築家の古谷誠章、妹島和世の両氏が「人びとの集まる、しなやかな建築」をテーマに対談した。
古谷氏は、これまでに手掛けた自身の作品から「時間はかかっても地元の人と協力して何かをつくる活動が設計者と住民の双方にとって良いものになる」という体験を紹介し、人を集める建築には「人々を受け入れる柔軟さが必要になる」と指摘した。
その上で妹島氏が設計を進める日立市の新市庁舎を例に「人々を受け入れ、それぞれが楽しめるしなやかさ」が不可欠になると語った。
妹島氏は、「建築単体にモニュメントのような力があった方が良いという気持ちはある」としながらも、「出入りが自由で、そこを利用する人がそれぞれの使い道を編み出せるのは公共建築でも個人の住宅でも重要な要素だ」と述べた。
そのため、建てることで周囲の街並みを古くさせる「 街から浮いてしまう」建築ではなく、まちとのつながりを重視することで、「 周囲に溶け込み、周囲の環境にも影響を与える建築にしたい」との考えを示した。
古谷氏は、今後の庁舎建築のあり方について、人口減少と情報技術の発達に伴って「庁舎から行政機能がなくなり、人と人をつなぐ場所としての市庁舎が増えるのではないか」とし、庁舎に求められる機能は大きく変化していくと見通した。
妹島氏もまた、建築へのニーズが複雑化する中で「1つの建築ですべての機能を満たそうとするのは無理がある」とし、周囲の環境や都市とつながりを持つことが重要になると指摘した。「(建築にあらゆる機能を持たせることはできないが)行けば誰かがいて、人と話す気になり、そこからいろいろな出会いが生まれる。これからの庁舎建築はそういう場所をつくらなければならない」と強調した。
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