2015/10/23

【記者座談会】2020東京五輪3施設へのDB公告、業界への影響は?


 東京都が整備する、東京五輪の3競技施設の新築工事が、実施設計と施工の一括発注方式による一般競争入札として公告された。予定価格は3施設合計で約1148億円(税込み)に及ぶ。技術提案型総合評価方式を適用し来年1月には落札決定となる見通しだ。
 写真は競泳会場となるオリンピックアクアティクスセンター(仮称)の内観パース。
 
A 東京五輪の主要3施設がデザインビルド方式で東京都から入札公告された。
B 都では20年五輪に向けて確実に整備すべき施設であることや、大会後の減築など施工難易度の高い施設もあり、高度な技術力に裏付けられた創意工夫が重要だとし、限られた時間の中で確実に整備するための手法としてDBを採用したとしている。
C 都発注工事でのDB採用は「特殊で限定的な事例に適用する」としており、今回の五輪施設発注に至るまでに、庁内でも試行案件を重ねた上での実施となっている。
A 設計界からは、五輪後も引き続きDBでの発注があるのではと危惧する声もあるというが。
C 都は現時点で、今後発注する工事で「DB方式を採用する予定はない」との姿勢を示している。あくまで五輪関連施設のみの特例ということだ。
A 建築設計事務所の反応はどうだろうか。
D 建築設計事務所はDB方式に対して以前から否定的だ。設計・施工一括方式ではなく、設計・施工分離方式を求める方針は基本的に変わっていない。白紙撤回となった新国立競技場の建設に対しても、日本建築家協会、日本建築士会連合会、日本建築士事務所協会連合会などが設計施工分離方式の採用を要望してきた。
B ただ、工事費が不安定な状況を考慮してゼネコンが設計段階から参加する「ECI(アーリー・コントラクター・インボルブメント)」方式については、工事費削減や不調防止の手段として評価する建築設計事務所は急速に増加している。
D 確かに、ECI方式を採用すれば入札不調は回避できる。しかし、十分な設計図書がそろわない段階で適切な積算をするのは不可能だ。早期に請負契約金額を確定しても、施工者決定から着工までの期間で施工者提案VEの名の下に設計仕様の低下を招くような事例も少なくないと指摘する声もある。また、施工会社の規模や技術レベルによっては工事費縮減効果に圧倒的な差があり、期待する効果が発揮できない可能性があるかもしれない。
C しかし、発注者にとって工事費縮減は喫緊の課題だ。
D もちろんECI方式が適した用途もある。ただ、工事費削減を考えるのも建築設計事務所の役割だ。今後は技術に裏打ちされた意匠・構造・設備設計で発注者の信頼を回復しようとする動きも活発化するだろう。
A ゼネコンはどういう反応か。
E 設計部隊を保有し、設計から施工まで一括で請け負うことのできる大手ゼネコンの間では、設計・施工一括方式の広がりを歓迎する声が多い。設計から施工性を考慮する契約方式の有効性を強く訴えてきたある大手ゼネコン幹部は、「ゼネコンの技術者が減っている時に、(施工計画として)非合理な設計のまま工事を行うことはもう続けない方が良い」とまで言い切った。厳しい工期での施工を発注者から求められ、技能者不足も問題となっており、生産性の向上が求められている中で、『施工しやすい設計』ができるDBは、ゼネコンにとっては最も効率的な方法に映る。効率的に施工できれば、工事ごとに利益を上げることもできる。
B ゼネコンはただ単に設計委託費の獲得を狙っているわけではない。だから、設計は設計事務所に委託するというスタイルのまま、施工者が設計段階から施工性を反映させるよう求められるECIは設計者と施工者の軋轢(あつれき)も生まない良い方法といえるのかもしれない。
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