筑後川の土木歴史遺産デ・レイケ導流堤の一部に橋脚を設置する筑後川橋工事が国土交通省九州地方整備局で進められている。筑後川橋は機能維持やデザインなど導流堤に配慮した設計で、橋脚の着工に向け現在は、謎が多い導流堤の内部構造を調査・記録している。土木歴史遺産に配慮し、“生かす”公共事業が展開されている。
デ・レイケ導流堤は、筑後川下流域でがた土の堆積を防止し、航路の確保を目的に築造された石堤で、長さ6.5㎞は同時期築造の導流堤の中で最も長い。高さ5m、幅11.5mの規模で、内部構造は粗朶(そだ)沈床に、土混じり石が乗っていると考えられ、それを張石が覆い、両脇に捨て石が添えられている。
内務省技術顧問のオランダ人技師ヨハネス・デ・レイケの指導により明治20(1887)年に着工、明治23(90)年に完成した。100年以上経過した現在も機能を発揮し、土木学会の2008年度選奨土木遺産に選定されている。
事業は、この導流堤の一部を解体撤去し、有明海沿岸道路・筑後川橋(長さ450m、鋼4径間連続中路アーチ橋)のP6橋脚を設置する。設計は、橋脚の幅を張石の幅より小さくすることや、導流堤とのメリハリをつけるコンクリート打放し仕上げ、高さを低くし台形断面化するなどとし、導流堤の機能や形に配慮している。
導流堤の内部調査 |
橋脚工事は村本建設の施工で、ことし2月に着工した。工事は導流堤の調査と解体から始め、鋼矢板による仮締切を実施し、9月14日に調査開始した。調査は張石と裏込めのかみ合わせの状況、内部構造の形状、内部の地質構成などが対象だ。
導流堤の建設当初の調査報告書や設計図書は見つかっていない。解体記録も今回が初めてとなる。実際、この間の調査で、粗朶沈床工法の採用が初めて証明され、推定よりも浅い部分に粗朶が存在することが分かった。また、張石を支える胴木の発見もあり、学識者を驚かせている。有明海沿岸部の軟弱地盤にあって100年以上も沈下しないなど解明されていない謎もあり、今後の調査結果が注目されている。
調査は10月半ばまで実施し、11月にも橋脚の基礎工事に着手する。工事の完成は16年12月を予定している。
整備を担当する九州地方整備局福岡国道事務所計画課の森賢二課長は「地域の人の思い入れが強い施設。今後の工事でも配慮して進めたい」と話す。また、解体後の張石は、近くの公園などに復元展示することとしており「今まで遠目でしか見られなかった施設が陸に上がり、身近になる。土木遺産を肌で感じてほしい」としている。
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