熊谷組は、ODA(政府開発機構)案件を受注したミャンマーで、新たな社会貢献活動をスタートさせた。ヤンゴンから北に240㎞離れたタウングー市では、学校の教室が足りず、中学課程を終えられない子どもたちが多い。今回、同社の寄付によって「ティライン小中学校」の新校舎が完成した。実はこのプロジェクト、同社の建築事業本部で活躍する女性の情熱がきっかけとなって動き出した。付加価値の高い支援スキームを構築できたのも大きな特徴だ。
建築事業本部営業統括部ソリューション推進部事業企画グループの星野恵美課長は、ある夢を抱きながら熊谷組に入社した。学生時代に建築を学んだ星野さんの夢は、教育を受けられない子どもたちのために校舎を建設することだった。入社後も、その思いを温め続けながら日々の仕事に向き合っていたが、「実現できるのは、もしかすると定年退職後かな」と考えたこともある。
新校舎で学ぶ第一号の生徒たちと星野恵美さん(右上) |
こうした中、同社がミャンマーで「タウングー教員養成大学新築工事」を受注した。星野さんにとっては絶好の機会だった。この建設現場周辺での校舎建設支援を会社に提案し、パートナーとなるNPOを探すためヒアリングを重ねた。「提案の実現に向け、社内では全面的にサポートしようという機運が高まった」(渡辺裕之国際支店長)。
施工中の教室。地元の若者を雇用した |
ミャンマーやベトナムで、現地の職人を育成しながらインフラや学校などを建設するNPO法人・ブリッジエーシアジャパン(BAJ)と組むことになった。BAJにとっては、「熊谷組によるODAの建設現場を見学し、現場管理や安全管理などの手法を参考にさせてもらった」(コーディネーターの新石正治さん)というメリットも大きい。実際、安全標識などを校舎の建設現場にも取り入れ、安全確保を呼びかけた。
地域住民へのヒアリング |
今回の支援は、独特の事業スキームに基づいて動き出した。熊谷組はまず、現場周辺で校舎の不足状況などを自ら調査し、地域の人々にヒアリングを行った。その上で建設候補地を決め、教育省から建築許可を取得。同社から施工費の寄付を受けたBAJは、現地で建築技術を身に着けたい若者を雇用して校舎建設を進めた。こうした支援スキームは、「ミャンマーでは初めて」(在ミャンマー日本大使館)という。
完成した新校舎 |
この支援の枠組みは、「KUMAGAI STAR PROJECT(クマガイ・スター・プロジェクト)」と命名した。子どもたちに、それぞれの人生で輝く星になってほしいという思いが込められている。一方、ミャンマー国旗の中心にある星もイメージした。
同社は、自社の顧客などにも支援参加を呼びかけていく方針。「熊谷組と熊谷組のお客様で行う社会貢献活動」と位置付け、継続的に事業を展開していきたい考えだ。
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