「楽しい建築をつくる時代は終わったが、まだやるべきことはある」。建築家の安藤忠雄氏は5月22日、東京都文京区の東大安田講堂で講演会「『可能性を求めて』--歴史と未来」を開き、参加した東大生らに建築の仕事に携わる心構えを説いた=写真。
講演会の冒頭に自らがん闘病について触れ、すい臓と脾臓を摘出した後も仕事を継続していることを紹介し、「仕事へのビジョンがあれば働くことができる」と強調した。一方で新国立競技場を巡る混乱についてはビジョンのない全体計画が原因とし、「ビジョンがなく経済性だけを考えて建築をつくるために街はおかしくなる。自分の仕事に愛着を持ち、建築に愛情を抱いてほしい」と呼び掛けた。
その上で、アメリカの詩人サミュエル・ウルマンの「青春とは人生のある期間ではなく、心の持ち方をいう」という言葉を引用し、「青春とは全力で生きるということだ。目標とビジョンを持って仕事をしてほしい」と語った。「若いということは挑戦も失敗もできる。勇気さえあれば良い」とも。また自らの建築への思いについても言及し、「建築は10坪の住宅からランドスケープまですべてに大きな可能性がある。人間は地球のなかで生きていることを忘れず、売上げや利益ではなく自然の環境とともに生きていることを意識した建築をつくりたい」と述べた。
さらに講演会後、学生から自らのビジョンについて問われ、「歴史的な建築家や街並み、職人などみんなの思いを積み重ねて次の世代にバトンタッチするような建築をつくりたい」と語るとともに、こうした建築を実践していく中で、多くの技術者に挑戦する勇気を喚起していきたいと力を込めた。
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