供用後の新小岩陸橋 |
地域の大きな期待に応えるため、都は早期に渋滞緩和を図る必要があった。
通常の陸橋工事では、まず基礎を造って、柱を建て込み、橋そのものを造るという段階と手順を踏む。橋脚や橋台といった基礎は一般土木工事、橋は鋼桁やPC桁といったその他工事と、土木工事では発注する構造物によって業種が異なる。工事発注をベースに考えれば、業種ごとに期間をずらして発注していくのが普通だ。
だが、「うまく契約を重ね合わせたとしても、基礎に1年、桁に1年半、道路舗装や照明設備、防音壁の設置など仕上げ工事に1年はかかる」(新井田功第六建設事務所工事課工務係長)というように、設計を含めれば、トータルの事業期間は4年を超えてしまう。
◇設計施工一括
「どういう手法がとれるのか模索していた」
ヒントになったのは当時、国土交通省とゼネコン、橋梁メーカーなどが進めていた短期間立体施工の共同研究だった。
「陸橋だけでなく、シールド工法などで交差点をアンダーパスで交差させる手法もあった。通常であれば、発注者である都が設計をして、現場に合わせた工法、工程を形にして発注に入る。こうした流れの中で当時はその時間さえ惜しいと思った」という。
また、ちょうど『総合評価方式』の導入が進み始めていたことも味方した。
「短期間立体施工の手法を取り入れると決めた時、この現場に使えそうな工法が複数あった。都が工法を指定するよりは、より自由度を高めて、さまざまな研究を進めている民間企業の技術提案を求めることにした」
都は、懸念される現場施工の長期化や工事中の二次渋滞を避けるため、短期間施工を前提に新たな契約手法を採用。異業種JVによる設計・施工一括の技術提案型総合評価方式の採用に踏み切った。
◇上部、下部も一括
「短期間での立体化を実現するために現場に合わせた設計までしてもらう。まさにオーダーメードだ。ただ当時、建設局で設計・施工の一括発注は前例がなかった。初のチャレンジに建築工事や国交省で数例あった事例を参考に見よう見まねの状態だった」と振り返る。
一括発注は、設計と施工を同一の請負者が行うため、細部まで現場での施工性を考慮した設計が可能になる。それは同時に施工段階でも優位に働く。現場状況の変化にも設計担当が素早く対応、即座に施工に反映することもできたという。
また、従来のように上部と下部を分割発注する場合、発注者側は施工業者が異なっても施工できる構造にしておく必要があるが、設計・施工の一括発注では上下部の施工区分に左右されることがない。構造形式の検討に自由度が増したことは言うまでもない。
建設通信新聞(見本紙をお送りします!)2013年1月16日4面
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