2013/01/09

【新工法】「縮む赤プリ」 大成・西武JVが解体工事中

解体中の旧グランドプリンス赤坂

 「赤プリ」の愛称で親しまれた旧グランドプリンスホテル赤坂(東京都千代田区)が、外観をとどめたまま徐々に縮んでいる。解体工事には、大成建設が開発した「テコレップシステム」を導入。周辺環境に配慮し、建物にかぶせた“帽子"の中で作業が行われている。

 西武プロパティーズが、大成建設・西武建設JVの施工で進めている解体工事の現場は、住居系の用途地域に位置し、近隣には学校や緑地空間なども存在する。西武プロパティーズは解体工事に当たり、「周辺に粉じんや振動、騒音を出さないことを最も重視した。また、長年親しまれてきた『赤プリ』の見た目を損なわずに壊せる」(齋藤朝秀開発企画二部長)といった観点から、テコレップを採用した。

テコレップシステムの内部。
1500㌧の重量を15本の仮設柱で支えている
◇仮設柱を巧みに使用

 建物最上部に閉鎖空間をつくり、上階から順に解体するテコレップの適用は、大手町フィナンシャルセンター(東京都千代田区、高さ約105m)に続く2例目。今回の旧赤プリ新館は、高さ約140mに達する。加えて、丹下健三の設計による複雑な建物形状も克服する必要があった。
 既存屋根フレームを有効活用しながら解体フロアの周囲を覆い、作業を行う閉鎖空間を構築。上から見ると「V字型」になっている独特な形を考慮しながら、15本の仮設柱をバランスよく設置した。“帽子"部分の総重量は1500tあり、1本の仮設柱で100tの荷重を支えている。
 仮設柱内にジャッキを組み込むことで、重量を支持しながら、安全に自動降下することができる。今回は、吊材を使ったジャッキダウンシステムを採用した。
 解体した部材は、天井に設けた水平搬送用の走行クレーン、垂直搬送用のテルハ各2機で運び出す。作業対象フロアの解体後、空間全体をジャッキダウンしていく。旧赤プリは、1フロアの階高が3.2mとオフィスなどに比べて低いことから、2フロアを1スパンとする解体工程を組み、工期短縮を図っている。

仮設柱に組み込まれたジャッキ

◇荷下ろしで発電

 大成建設の市原英樹技術センター建築技術開発部次長は「内部完結型の工法のため、騒音や粉じんの飛散防止に絶大な効果を発揮する」と胸を張る。騒音の低減量は17-23dBと試算、粉じんの外部飛散量は最大90%低減できるという。震度6以上の地震や強風でも、問題が生じない構造上の安全性も確保している。
 また、建築現場では世界初という荷下ろし発電システムも導入。解体部材をクレーンで降ろす際のエネルギーを電力に変換する。今回は従来の回路に改良を加えることで、蓄電しながら、余剰電力を余すところなく照明や空調などに使えるようにした。
 8日にはテコレップ内部が報道陣に初公開された。12年11月13日の最初のジャッキダウンから現在までに、旧赤プリは30m超縮んだ。解体スピードは1スパン10日で、大成JVの小倉学所長は「作業員の熟練度が上がり、建物高さも低くなるので、今後は9日サイクルも可能になる」という。6月中には、すべての解体作業を完了する見通しだ。
建設通信新聞(見本紙をお送りします!)2013年1月9日3面



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