2013/01/17

【連載】渋滞克服に挑む!3 「すいすいMOP工法」で超短期施工

都が採用した技術提案型総合評価方式では、価格に加え、工期短縮や施工計画、LCC(ライフサイクルコスト)の削減、環境対策といった技術提案を求めた。発注者として「短期間で2車線の陸橋をつくる」ということを基本条件に民間の最新技術、工法を引き出すため、特に技術点における工期短縮の配点比重を高めるなど、最重要の評価項目とした。

 入札には2者が参加。価格点では下回っていた三菱重工橋梁エンジニアリング(現・三菱重工鉄構エンジニアリング)・戸田建設JV(協力企業・アイサワ工業)が、技術点で価格点における差を逆転して落札した。
 同工事では立体化関連日数が90日、現場施工日数が30日短縮される提案が採用された。まさに価格のみでなく、技術力を評価する総合評価方式が生かされた結果でもあった。
すいすいMOP工法

◇上下工一体の特許工法

 大幅な工期短縮を実現できたのは、三菱重工橋梁エンジニアリングと戸田建設が共同開発した特許技術『すいすいMOP工法』の採用が大きかった。同工事では、すいすいMOP工法のうち、桁のブラケット部を折り曲げて架設する『モジュール桁工法』を採用している。
 こうした特殊工法の採用は特定の企業しか施工できないため、従来の設計・施工の分割発注では設計段階から採用していくことはできない。「上部・下部一括施工」と「設計・施工一括発注」という新しい発注方式への挑戦が、結果的にこうした特殊工法の採用を可能にした形だ。
 一方で「工期短縮」による技術点の比重を高めたことは発注者にとっても冒険ではあった。このケースのように工期の短縮日数で価格点での差を逆転した場合、契約した企業が万が一、工期を延伸した際には、公平・公正が求められる公共調達において契約した根拠が失われる懸念もあったからだ。
 受注した側から見れば、企業の威信にかけても、自ら設定した工期で工事を完了させることは当然だが、発注者側もそこがポイントになるとみていた。

◇違約金も設定

 当時、設計部門を担当した新井田功第六建設事務所工事課工務係長は「実施要領で通常の工期遅延の違約金とは別に、設定工期からの遅延日数に応じて違約金と工事成績の減点を科すことにした」と話す。
 また、内部的にも「発注者の都合で(現場に)遅れが生じるわけにはいかない」と監督体制を強化。昼夜間施工が連続するため、監督補助業務委託を導入して、集中する監督業務に対応したという。
 「発注者が行う確認行為は工事の途中段階で何カ所もある。受注者側が短期間で施工を進める中で、工事中の確認行為にもスピードが求められた。内部的にも現場を遅らせないような体制をしっかり固めていた」
 こうした官民一体の労苦が契約から完成まで1年、現場に入ってから交通開放まで6カ月という究極の短期間施工を実現させた。
 新小岩陸橋の開通によって、蔵前橋通りから「たつみ橋交差点」への流入交通量は約30%以下に激減。渋滞は解消した。短期間施工による事業効果の早期発現と、数字として端的に表れる整備効果の大きさ。成功例と言われる所以である。
(おわり)
建設通信新聞(見本紙をお送りします!)2013年1月17日4面

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