2012/01/23

サッカーボールみたいな仮設集会所が完成/立命館大の宮古復興支援プロジェクト ODENSE

 本州最東端に位置する岩手県宮古市の重茂千鶏地区の仮設住宅敷地内に、サッカーボールを思わせるような形状の仮設集会所が完成した。立命館大学理工学部の宗本晋作准教授(建築都市デザイン学科)を中心に30人の学生が参加して取り組んだ「宮古復興支援プロジェクト-ODENSE(おでんせ)」だ。1月9日に開かれた竣工式では学生と地元関係者など150人を超える出席者が集い、新たな交流の場の誕生を祝った。
 同市中心部から車で約1時間。海沿いを走る県道1本で結ばれている同地区は高さ30mを超える巨大津波によって壊滅的な被害を受け、震災後約2週間にわたって孤立した。地域の交流の場として機能していた介護施設も津波で流され、その代替施設を市社会福祉協議会が模索していることを被災地視察に訪れていた宗本准教授が耳にしたのがきっかけとなってこのプロジェクトはスタートした。
内部で行われた式典
 「住めるところは確保できたが、みんなの集まる場所がない」という悩みを解消するため、簡易な集会所の建設を発案。教職員の主体的な復興支援活動に対する同大の予算措置事業にも採択され、昨年8月から現地でのヒアリングを開始した。ごろ寝ができるスペース、身障者用トイレや炊事場……。住民の要望を受けてよりスペックの高い施設へと構法や使用材料を見直し、設計を練り直す。こうして導かれた施設は一辺2mの六角形の木製パネルと窓となる五角形のパネルを組み合わせたドーム型とすることで空間の広さや強度、採光を確保した。日新工業など12社が協賛し資材などを提供している。
 11月からの工事には20人の学生が常駐し、地元の大工棟梁の指導を受けながら作業に取り組んだ。約86㎡の集会所はデイケアサービスや交流の場として活用される。
 学生リーダーの一人、酒谷駿一さんは「自分たちだけではできなかった。私たち学生を受け入れ、支えて頂いた地元の皆さんのおかげです」と半年にわたる活動を振り返る。宗本准教授も「建築のプロセスを学ぶとともに、地元の皆さんとの交流を通して、困難の中で生きる姿勢を目の当たりにして学生は大きく成長した。今後も私たちができることで復興の役に立ちたい」と話している。

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