2017/02/28

【八ッ場ダム〈下〉】着々と進む関連整備事業 道の駅、滞在型市民農園、やんば資料館が好評


 関東地方整備局が群馬県長野原町で進める八ッ場ダム建設に伴い、建設地周辺では国や県、町により付け替え道路などの関連工事が進行中だ。ダム本体が2019年度完成に向け工事が本格化する一方で、関連整備事業は一部の家屋移転や町道整備などを残すのみとなり、着々と進んでいる。写真は長野原町が設けたクラインガルテンやんば

 同事業は水没地に隣接して代替地を造成することで、生活再建を図る「現地再建方式(ずり上がり方式)」を採用しており、国は5地区で湖面より上の高台を切り開き、代替地を造成。地区ごとの寺社移設も進めている。

不動大橋から八ッ場大橋を望む。その奥にダムサイトが見える

 約22.8㎞の付替国道・県道は、国や県が96%(以下、進捗率は16年9月末時点)を整備済み。湖面の上を通る八ッ場、不動、丸岩の3大橋も開通した。残る上流の長野原諏訪大橋も16年度内に完成する予定だ。ダム下流側の東吾妻町でも道路整備や土地改良などが実施された。  JR吾妻線岩島駅~長野原草津口駅間も、ダム湖に沈む川原湯温泉駅を含め右岸高台に付け替えられ、東日本旅客鉄道(JR東日本)が14年10月から運用を開始している。
 ダム建設と関連工事のために必要な用地約456haは97%が取得済みで、移転が必要な家屋470世帯中99%の移転も終えている。いずれもほぼ契約は済んでおり、移転を待つのみの状況だ。

移設されたJR吾妻線の川原湯温泉駅

 代替地のうち林地区では、長野原町が地域振興施設として『道の駅八ッ場ふるさと館』を13年4月に開業。ダム完成後はダム湖を望むことができる。
 同町は川原畑地区でも滞在型市民農園『クラインガルテンやんば』を整備し、14年4月にオープン。10区画すべて貸し出し中で人気の施設となっている。
 また、川原湯地区の打越代替地には、ダム本体工事を受注した清水建設・鉄建建設・IHIインフラシステムJVが『なるほど!やんば資料館』を15年8月に開設。人型ロボット「Pepper(ペッパー)」がコンシェルジュとして来訪者を出迎えている。
 同局八ッ場ダム工事事務所の塩谷浩事業計画課長は「地元の意向を反映し、調整に気を遣いながら進めたい」と語る。
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