2014/07/09

【現場最前線】ヘルメットの色で役割を「見える化」 大林JV作業所の取り組み

大阪のメーンストリート・御堂筋に面して立つ「日本生命本店本館」。現在の日建設計の前身である長谷部竹腰建築事務所が設計を手掛けた、御堂筋沿いでは最も古いビルの1つだ。その本店本館から心斎橋筋を挟んだ東側で、大林組・竹中工務店JVの施工により「(仮称)日本生命新東館」建設が進む。同現場の林忠利工事事務所長を始めとするJV職員は「作業員が、長期にわたって仕事を行う上で、快適かつ安全に過ごしてほしい」との思いを込めて職場環境の向上に努めている。その努力が実り、ことし3月に日本建設業連合会(日建連)の「2013年度快適職場表彰」特別賞を受賞した。同現場のキーワードは「思いやり」と「現場の和」だ。
 2012年6月に着工した同工事。規模はS一部SRC造地下2階地上14階建て塔屋2層延べ6万0449㎡で、免震装置を備えている。設計・監理は日建設計が担当。隣接する本店本館ビルの重厚なデザインを継承して新東館も花崗岩打ち込みのPC版を採用している。
 最盛期を迎え、最大約700人の作業員が入場するという大規模建築現場。「数十社約100グループの異なる工種の作業員が安全に作業できる環境づくりを目指して」(林所長)、現場では「見える化」を推し進めている。

ヘルメットに点滅ランプも装着
作業分担を分かりやすくするためにヘルメットを色分けし、蛍光ベストやヘルバンドで作業の責任者や有資格者が誰か、見分けがつくように工夫した。例えば、職長なら赤いヘルメット、作業リーダーは青いヘルメットを装着。ベストやヘルバンドには「作業指揮者」「監視員」「誘導員」「合図者」といった役割を明記した。さらに掘削面などの危険な場所では、作業員のヘルメットに点滅ランプを装着させている。こうした「見える化」の取り組みは各方面で高く評価され、13年秋に大阪で開催された第72回全国産業安全衛生大会の「安全見える化パネル展」奨励賞も受賞している。
 夏場の安全衛生活動の中で大きなウエートを占める熱中症対策。とりわけ13年は気象庁の夏平均気温が西日本でプラス1.2度と、統計史上最高を記録するなど猛暑に見舞われた。同現場でも積極的な熱中症対策を講じ、作業員の体を冷却するためのミストシャワーを休憩所や手洗い場などに設置。冷水器や製氷機のほかにエアコンや冷蔵庫、ベッドなどを備えた「熱中症対策室」も設け、応急処置ができる体制を整えた。

かき氷小屋
中でもユニークな試みが、現場の一角に設けられた「かき氷小屋」だ。「冷たいかき氷がいつでも食べられ、作業員同士が気軽に談話できる」(林所長)と好評で、毎日200人以上が利用。あまりの人気に暑さが一段落した10月初旬まで継続させたという。

植栽を施した仮囲い
クリスマスのイルミネーション
こういった取り組みは現場内だけではない。「自然空間を増やして多くの人に安らぎを与えたい」との思いから、現場仮囲いの四隅に四季折々の花を用いた植栽を施しているほか、仮囲いに現場周辺の幼稚園の園児たちが「夢」をテーマに描いた作品を掲示。クリスマスの時期には現場の外部足場などを用いてイルミネーションやLED(発光ダイオード)を使ったライティングを実施するなど、年間を通じて近隣への細かい気配りも忘れない。
 現場のスローガンは『人に優しく 自分に厳しく 笑顔で築こう現場の和』。これは、お客さんや近隣住民の方々に対し、思いやりを持って工事を進めていくという決意を込めて林所長自ら考案したとか。現場の内外に向けられたさまざまな「思いやり」が、日建連の快適職場表彰として結実した。
 工事は終盤に入り、15年1月末の完成引き渡しへとラストスパートをかけており「まだまだ気は抜けない」と林所長は表情を引き締める。
建設通信新聞(見本紙をお送りします!)

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