
一見、ひとりの建築家から生まれたとは思えない。しかし、物語のように本書を読み進めていくうちに、どの建築も、環境、社会、地域、未来、クライアントに対する同氏の気配りを感じるところが一貫していると気づく。 約320ページの大半を、スケッチ、写真、図面に割いているが、論評も興味深い。建築空間は「施設」か、1戸の住宅に1家族が住むというのは絶対か--と、人びとが前提としている思い込みを取り払っていく。震災(おそらく東日本大震災)の被災者に会ったことで、都市に暮らす私たちが当然のように思っている「プライバシー」についても、ある言及をしている。
社会と人の関わりを大切にした建築、崩壊した地域社会のコミュニティーを回復する住宅を思考する。こうした山本氏の考え、態度や建築を理解するのに絶好の書だ。 新工法と結びついた住民参加型の設計で、22回も平面図を描き直し、実施設計まで完了しながら幻となった「邑楽町役場庁舎」も収録。 amazonへのリンク RIKEN YAMAMOTO 山本理顕の建築
0 コメント :
コメントを投稿