2012/01/11

仙田満氏の遊びを原点にした設計が1000ページ 『SENDAMAN1000』発刊

 建築空間を感じるためには、そこで実際に動き回る必要がある。大人になれば、走ったり飛び跳ねたりせず、主に歩くことでその空間を体験することになる。いわば感覚による“静”の空間体験である。一方、子どもは、常に隙間を探しながら動き回ることで、身体的に空間を認識する。子ども時代の“動”の空間体験こそ、将来、創造力を生み出す力になるのではないだろうか。
 その行動の重要なファクターは「遊び」だ。仙田満氏は、40余年にわたって子どものための環境づくりに取り組んできた。同書は、その成果を藤塚光政氏の写真を中心に1000ページにわたって紹介している。
 テレビ・携帯ゲームに没頭し、外の空間と分断した世界に住む子どもたちが増えたのは、楽しく身体を動かせる場所が減ったからかもしれない。仙田氏がこだわるデザイン手法である「遊環構造」は、遊具、建築、都市に共通するあそび空間の構造だ。この条件を盛り込めば、たとえ広大な敷地がなくても、人の活発な活動を誘発する。
 仙田氏がつくる「こどものための環境」は、大人になっても創造力をかき立てられる空間となる。子どもの時からそばに寄り添い、人の成長を手助けする建築ともいえる。
(美術出版社・8400円)

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