2012/01/16

三陸鉄道の復興へ/鉄道機構の全面支援で短期決戦

岩手県三陸沿岸の複雑な海岸線を縫うように走る三陸鉄道は、発災から10カ月を経た今も路線の約3分の2が不通区間だ。その1日も早い全線運行再開は被災地域の生活を支え、産業振興や地域活性化に直結する。復旧工事は第三セクターの三陸鉄道(岩手県宮古市、望月正彦社長)から要請を受け、鉄道建設・運輸施設整備支援機構が全面的に支援する。その最前線基地である三陸鉄道復興鉄道建設所の進藤良則所長は「復旧工事を精力的に実施することが、三陸地方全体の復興への弾みとなる」と語る。

 鉄道・運輸機構は、震災直後から現地入りし被災調査や復旧工法などを指導した。2011年11月1日には同鉄道の北・南リアス線復旧工事の施行協定を締結し、同3日から復旧工事に着手している。
 岩手県久慈市の市役所分庁舎内に鉄道建設本部東京支社の三陸鉄道復興鉄道建設所を設置したのは同24日。当初は進藤所長を含め6人体制でスタートし、今月1日に1人増員した。今後も工事の進捗状況に応じて適切な執行体制を整えていくという。
 津波で流出した盛土や線路、通信ケーブル、駅や橋梁などの復旧工事の発注は東京支社が担当し、建設所は工事監督と、工事にかかわる関係機関との協議などを担う。土木構造物の設計は三陸鉄道で担当している。
 工事は3段階で進める。まず4月末までに北リアス線・陸中野田~田野畑駅間24・3㌔の運行を再開させ、既供用区間を含め久慈~田野畑駅間35・4㌔をつなげる。南リアス線の盛~吉浜駅間21・6㌔は13年4月に運行を再開。第3段階として北リアス線の小本~田野畑駅間10・5㌔と南リアス線の吉浜~釜石駅間14・9㌔を復旧し、14年4月には北リアス線71・0㌔と南リアス線36・5㌔の全線で運行を再開させる。
 被災区間は主に明かり部でトンネルは被害がほとんどないためルートの変更はない。盛り土区間は法面をコンクリートで補強する。橋梁は桁が橋脚と剛結していない単純桁が流出したことを考慮し、支承のないラーメン橋にする予定だ。
 また、津波による横圧力や揚圧力を低減するために、桁高を低く抑えた構造にすることも検討している。流出した橋梁は3カ所で、うち1カ所を盛り土構造に変更し、2カ所を再構築する。
 現在は、陸中野田~野田玉川駅間の復旧工事を急ピッチで進めている。進藤所長は「復旧完了時期が決まっていることから、工期は非常に厳しい状況にある。特に沿岸部のため冬季は強風の日が多く、天候に左右されることも配慮しなければならない」と課題を挙げ、これを克服するために「工種ごとの工程を少しでも短縮できるように施工方法の効率化に取り組んでいる」と語る。
 具体的には強度の発現が早いコンクリートを採用するほか、打設のサイクルを増やす工夫などで対応している。施工会社に対しては「作業員が不足する中、工事の進捗率を伸ばす努力をしていただいている」と謝意を示しつつ、「厳しい状況は十分承知しているが、1日も早い全線での運行再開を果たすため、さらなる工期短縮に力を注ぐことをお願いしたい」とも。
 「沿線住民の生活の足であり、地域活性化の役割を担う三陸鉄道を1日も早く復旧し、住民や観光などで訪れる人たちに末永く愛される鉄道として復活できるように努力したい」--こうした鉄道技術者の熱い思いが復興現場を支えている。

Related Posts:

  • 【復興版】塩屋埼灯台が復旧!! 太平洋一望の観光地が22日から公開 震災で被災した福島県いわき市の塩屋埼灯台の復旧工事がほぼ完了し、28日、報道機関に公開された。福島海上保安部は2月22日から一般公開を再開する。 海抜約50mの断崖から太平洋を一望できる観光地として知られ、高さ27mの白亜の灯台は「日本の灯台50選」の一つ。美空ひばりさんの歌『みだれ髪』の舞台にもなった。市によると、年間約10万人の観光客が訪れていたが、震災で高台の斜面が崩れ、灯台の一部も損壊。2011年11月の再点灯後も通路の工事などが続い… Read More
  • 【復興版】300万トンのがれき処理完了! 石巻ブロックで火納め式 役割を終えた焼却炉 18日に火納め式が開かれた石巻ブロック(石巻市、東松島市、女川町)では、宮城県全体のほぼ半分に及ぶ膨大な災害廃棄物が発生。同処理業務を受託した鹿島・清水建設・西松建設・佐藤工業・飛島建設・竹中土木・若築建設・橋本店・遠藤興業JVは、2年以内という限られた期間で処理するため、破砕・分別を中心とするAと、焼却を行うBの2つのヤードに分けて中間処理施設を早期に建設した。  業務着手後、放射能問題の影響で予定されていた広域処理… Read More
  • 【復興版】釜石へ7600トンの防波堤ケーソンが出港! JFEエンジ JFEエンジニアリングは、国土交通省東北地方整備局から受注した釜石港湾口防波堤ハイブリッドケーソン2函の製作を終え、輸送を開始した。25日に釜石港内に入港する予定だ。 ケーソンは長さ50m、高さ19.5m、幅20.3mで総重量は約7600t。昨年4月から津製作所(津市)で鋼製部材を製作後、海洋ドックを利用して鋼製部材の大組立やコンクリート打設を行った。ケーソンには、津市立香良洲小学校の児童127人が復興への願いを描いた応援メッセージ幕が掲げら… Read More
  • 【復興版】合意形成迅速化! JACICが事業像の把握にCIMフル活用 いわき市の久之浜地区の防災緑地を3Dモデル化 日本建設情報総合センター(JACIC)は、被災地支援を視野に、CIM(コンストラクション・インフォメーション・モデリング)を活用した復興事業の3次元モデル構築に取り組んでいる。対象地区は、旧北上川河口部(宮城県石巻市)と久之浜地区(福島県いわき市)。自治体が作成した平面計画図に基づき、事業完了後のイメージを3次元モデルとして可視化することで、景観の比較検討や地元との合意形成などに役立てている。今… Read More
  • 【復興版】石巻ブロック災害廃棄物処理従事者に就職説明会 鹿島JVが地元支援 18日に火納め式を行った宮城県の石巻ブロック災害廃棄物処理業務(鹿島・清水・西松・佐藤・飛島・竹中土木・若築・橋本・遠藤JV)に従事していた地元被災者向けの就職面接会が22日、石巻市の同JV事務所で行われた=写真。ハローワーク石巻と宮城県が主催し、JVが会場を提供した。面接会には70人が参加、うち47人ががれき処理を担当していた。  鹿島JVは、技術提案の段階から地元雇用者の生業復帰支援を提案。事業中にも重機の特別教育や、パソコン教室など再就… Read More

0 コメント :

コメントを投稿