2012/01/13

連載・コンピューティショナル・デザイン-5-

・設計の役割・境界を融合
 設計プロセスの変化は、アーキテクト、エンジニア、プログラマーの境界をさらに曖昧にしていくだろう。こうした背景を踏まえて、設計に携わるデザイナーに求められる能力、役割とは何なのだろうか。
 まず一つ目は、設計のインプットとするデータの選び方にあると考える。無限のデータにフィルターをかけて、何を重要な情報として取り出すかはデザインプロセスの出発点だ。

・データとは何か

ワークショップの様子
 sg2011は、Building the Invisibleつまり不可視のデータをどのようにデザインに翻訳していくかということをテーマに掲げており、ワークショップ、カンファレンスを通して、データとは何かということについて活発な議論がなされた。
 データとは空間を取り巻く環境そのものであり、空間を占有する人間の行動を含めたダイナミックな情報の集積だ。無限のデータをデザインのプロセスに取り入れることが技術的に可能になったとき、デザイナーに求められるものはそれらを判断する目にある。
 次に、それらのデータをもとにどのような技術、空間を開発、提案するかが問われてくる。
 今回のワークショップでは、空間を評価する指標の一つとして、「パフォーマンス」という言葉が頻繁に使われていた。建物内部の湿度をセンサーによって感知し自動的に窓が開閉することによって内部の快適性を高めるインテリジェントなスキンの提案も見られたが、コンピューターの技術を使って、よりプリミティブでありながら、精度の高いパッシブなシステムを考案できる可能性もある。
 私の所属したクラスター(agent construction)では、サバンナのシロアリ塚に見られる驚くべき自然換気のシステムを例に挙げ、自然界に見られる自己組織化のプロセスをコンピューターによって再現することを研究のテーマとしたが、これは新しいパッシブなシステムの開発、空間の提案に応用できるかもしれない。
Foster+Partners 横松宗彦氏
(終わり)

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