東京・巣鴨で創立90周年を迎えた本郷学園。6棟の校舎群のうち、2号館と言われる校舎は、設計・施工を担当する鹿島によって、現在建て替え中だ。グラウンドに隣接する1300㎡の敷地は大きく掘り下げられ、約1万5700m3もの巨大な空間が姿を現した。ここに地下大講堂を備える予定。しかも地下空間は無柱で、プレストレストコンクリート(PC)梁とその上に構築する巨大コンクリートアーチが建物の構造を支える。地下部分の工事が最盛期を迎えた現場を訪ねた。
完成予想 |
現場は、校舎に二方を囲まれており、東側には民家も隣接している。現場を統括する青木幹雄所長は「生徒の勉強の邪魔になったり、近隣の方のご迷惑に極力ならないよう、音には気を遣っている」と話す。現場には低騒音型の重機を採用し、防音シートでの養生も行っている。
取材に訪れた日は、くしくも入学試験の前日。青木所長は試験日には当然施工を止めるなど、常に学校運営を第一に考えている。
◇巨大アーチ
この現場の最大の特徴は、地下2階に納められる巨大な講堂と、上部躯体を支えるコンクリートアーチだ。これは建築意匠にもアクセントを与える。
2号館は、RC造地下2階地上6階建てで、最高高さは26mだが、床付けレベルはマイナス12mを超える。これほどの大空間を掘削する理由は、敷地を最大限有効活用するためだ。地下に無柱空間を構築して、800㎡を超える大講堂を収容する。
地下に2層分の無柱大空間を作るため、PC大梁を1階床部分に設置する。この大梁で約1000人着席可能な大講堂を維持する。
そして1階には、34mスパンのグラウンドピロティが設けられる。地下2階から地上1階まで、建物中央部に柱が存在しないことになる。一方で、その上部にも教室階が4層設けられる。この部分の荷重を支えるのが、「大アーチ構造だ」と青木所長は胸を張る。
建物中央の側面に2本設けられる大アーチは、1階床レベルの柱から伸びたスパン34m、高さ8.6m。このアーチが、上部階の荷重を柱に受け流し、教室階、地下大講堂、グラウンドピロティの3つの無柱空間を実現している。
青木所長は、武蔵小金井駅南口の小金井市民交流センター、多摩美術大学図書館などを手掛けてきた。市民交流センターは「逆斜楕円錐形の文化ホール」を持ち、多摩美術大学図書館は、「3次元アーチ曲面壁」の建築だった。こうした経験に裏打ちされた技術で、今回の大アーチに挑んでいる。
象徴的なアーチが現れるのは夏になる予定だ。来年1月末の竣工を目指して工事は順調に進む。 工事概要
▽建物名称=本郷学園2号館
▽発注者=学校法人本郷学園
▽設計者=鹿島建築設計本部
▽監理=鹿島東京支店品質監理部
▽工期=2012年5月9日から14年1月31日まで(解体工事含む)
▽建築面積=1318㎡
▽最高高さ=26.52m
▽構造=RC造地下2階地上6階建て延べ8302㎡
▽掘削土量=約1万5700m3
建設通信新聞(見本紙をお送りします!)2013年2月20日 16面
0 コメント :
コメントを投稿