6月下旬に退任する戸田建設の井上舜三社長、社長に就任する今井雅則常務執行役員大阪支店長は12日、同社本社で会見した。要旨は次のとおり。
◇役員人事
井上社長 「来期以降の採算回復に向けて一定の道筋は付けられた。今後、このような取り組みの成果をスピーディーかつ確実なものにするためには、来期より新体制の下、再スタートを切ることが重要と判断し、昨年の10月以降、後任の選定を進めてきた。当社の最大の課題は、主力の建築部門を早急に立て直すことであり、しかも現在の負のスパイラルから脱するためには、新しい価値観を吹き込んでいかなければならない。そのためには若く現業に精通し、いわば本流を歩んできた強いリーダーシップが必要との観点から、今井常務執行役員大阪支店長を新社長に選び、昨年11月に打診し、その他の役員人事を決め、年明けの1月に改めて社長就任を要請した」
今井常務 「戸田建設の復活に向けて微力ながらお役に立てるのならと(1月の正式要請時に)就任を引き受けた。社長就任は人生最大のチャレンジであり、顧客、社員とその家族、株主、協力業者の皆さまに対する非常に大きな責任を感じている。そして、この大きなチャレンジを必ず成し遂げるという決意を日々強くしている」
「非常に危惧(きぐ)しているのが、お客さまにとって当社は価値ある会社として十分に認識されていないのではないかということ。営業の仕方、提案の内容、施工中のコミュニケーション、間接部門のサポートなどを含め、さまざまな点で他の大勢のゼネコンとの違いを訴求できず、価格競争に巻き込まれるようなスパイラルに陥っている。“価値ある戸田建設”を社長方針に掲げ、顧客に価値を認めもらい、一定以上の収益をコンスタントに上げていける状況に持って行くことが与えられた最大の責務と考えている。そのために必要なことは、全社員が目的意識を強く持ち、外に向かって行動すること。また、本社はもちろんだが、支店、現場の活性化なくして、戸田建設の復活はあり得ない」
◇業績悪化の要因
井上社長 「手持ち工事の最終的な利益がどうなるのかという読みがはっきりしていなかったというのが一番の要因。最初に計画した利益予測に対する現実の状況をタイムリーに掌握し、その内容を組織的に上に上げていくという当たり前のことができていなかった。その現状把握に大変手間取った。非常に甘い、根拠の薄い内容で最終原価目標を立てていたことが調査で露見した。実現不可能なものがたくさんあり、それらを調べていく過程で相当な下ぶれの予想を立てざるを得なかった。(12日に発表した)業績予想については自信を持っており、これ以上は下がらない」
今井常務 「社員数、職員数の消化能力を超えた手持ち工事量を持ってしまった。それによって利益を出していくようなストーリーづくりができなかった。職人不足になると、どうしても工程が後ろになり、突貫工事となっていく。そうなると利益の見通しも立たなくなる。中期経営計画の見直し以降、事業規模の見直し、本社組織のスリム化、コスト管理に対する新組織の設置や組織の統合などを行っており、身を縮めて、足元を固めれば必ず乗り切れる」
◇今後の方針
今井常務 「数字(価格)だけでなく、高くても選んでもらえるような存在価値が必要。お客さまから見て存在価値があり、お客さまに役立つ会社が一番大事。社員とその家族、株主、協力会社、職人から見ても価値がある会社を目指すべき。6月下旬の正式就任までが非常に重要な助走期間となるので、12支店を回り、支店幹部、中堅、若手社員、協力業者を含めて懇談していきたい。変化の激しい時代なので、顧客の変化以上にわれわれは速く変化し、一歩進んだ提案をしていく必要がある。縦割りの組織では追いついていかない。すべての部門が横のコミュニケーションを取り、一体になってスピーディーに動くことが必要なので、就任後に取り組んでいきたい」
建設通信新聞(見本紙をお送りします!)2013年2月14日 3面
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