建築写真家にとどまらず、編集、出版までを幅広く手掛け、建築を表現してきた二川幸夫氏の展覧会「日本の民家一九五五年-二川幸夫・建築写真の原点」が、東京都港区のパナソニック汐留ミュージアムで開かれている。高度経済成長が始まろうとする時期の民家の写真を通して、日本人が美しくも厳しい自然とともに生活していたことを思い出させる。同時に、直感を頼りに自らの足と目で被写体を追い求める二川氏の生き様が写し出されている。
同展示は、写真集『日本の民家』(全10巻)に収められた280点から72点を選出して紹介している。地域の自然や歴史的背景によって異なる民家を、地域ごとにストーリーを持たせて展示した。
民家を巡る旅は、建築史家の故伊藤ていじ氏との二人三脚で数年間続いた。同展覧会担当学芸員の大村理恵子氏は「近現代の建築を撮りながら、名もなき人が自然を大切にしながら暮らす民家に興味を持ち、大きなテーマとしていた」と、二川氏が撮る建築写真の原点が民家にあることを説明する。人物が入った写真は極端に少ないが、細部まで美しく力強い民家の写真から、そこに住む人の生活が浮かび上がって見える。
会場構成は建築家の藤本壮介氏が手掛けた。一般的な写真展のように写真パネルを壁に掛けず、目線の高さに浮いた状態で展示されている。「写真の森の中を歩くような空間」(大村氏)により、写真集の中に飛び込んで50年前の日本にタイムスリップしたような感覚を受ける。
会期は3月24日まで。入館料は一般700円、大学生500円。問い合わせは、ハローダイヤル03-5777-8600。
建設通信新聞(見本紙をお送りします!)2013年2月12日 3面
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