第8回日本建築大賞の『竹の会所』 |
B 設計者であり施主でもある陶器浩一滋賀県立大教授が、東日本大震災で津波被害を受けた宮城県気仙沼市本吉町につくった集会所だ。学生が地域の人と一緒に、地域に自生する竹を構造体に使って実現した。既存の建築生産システムには乗らない、大げさにいえばかかわる人の思いでつくり上げた施設といえる。
C 最終審査に残った6点とも公共施設かそれに準じた建築だったが、規模は大小さまざまだった。審査員も悩んだのでは。
B 確かに、審査員からは「横綱と子どもを比べるようで、少し無理がある」という意見も出た。用途も規模もまったく違う建築に順位をつけることは、この賞に限らず、多くの賞が抱えるジレンマだろう。一方、竹の会所には「3・11を経て、建築家が何をする人なのかを明確に伝えている」「小さくても大きな力を持っている」など、建築が住み生活する“始原"と捉える評価が高かった。
C でも、やはり仮設建築がJIAの賞を受賞するのは違和感がある。被災地ということやメッセージ性に強くスポットを当て過ぎて、技術やデザインなど建築を構成する大事な要素を見落としているのではないか。これでは「建築とは何か」という問いに対して「何でもあり」ということになりかねない。
B そうかな。もはや建築は存在感を誇示するシンボルではないし、「モノ」ではなくやはり「コト」なのだろう。「そこに人が集まり、何かが起こる」ということが建築の本質だとすれば、仮設であろうが手作りであろうが、価値は認められるべきではないかと思う。
建設通信新聞(見本紙をお送りします!)2013年2月8日 14面
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