家が人の行動を検知し、快適な暮らしを提供する--。東芝が府中工場(東京都府中市)に開設した実証スマートホームでは、そんな近未来の住まいを体感できる。丸山竜司コミュニティ・ソリューション事業部長は「環境(エネルギー)だけでなく、心(快適性)や体(ヘルスケア)にも優しい家が東芝の目指すカタチ」と強調する。そこには、人感センサーと設備機器が密接につながった究極の暮らしがある。
「これがセンサーの役割を担う」と、エネルギーソリューション開発部の枝広俊昭主務は8月に販売したばかりのリスト型活動量計を指し示す。歩数、移動距離、消費カロリーに加え、独自開発のアルゴリズムによって睡眠状態も自動的に割り出す優れものだ。1回の充電で2週間は使える。装着するだけで、健康の基礎データが蓄積される。
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リストバンドから情報発信 |
そもそも生活のサポート器具として発売したが、同社は「リストバンドから発信する情報によって、さまざまな切り口の仕掛けを提供できる」(枝広主務)と、その可能性に期待を寄せている。例えば朝起きた時に鏡の前に立つとミラーに血圧や心拍数などが自動で表示され、同時に時系列でグラフ化する。既に試作品を展示した。
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鏡に向かうと自らの健康状態がわかる |
スマートコミュニティー分野を重点市場に見据える同社は、2016年度までに1兆6000億円の事業規模を見込み、このうち住宅分野では年間1700億円の売り上げを目指す。スマートハウスは環境配慮に力点が置かれがちだが、エネルギー使用量を抑えながらも、いかに快適な暮らしを提供できるかが重要なテーマになる。「ここでは人の行動パターンから、最適なエネルギー消費を考える空間提案を体感してもらいたい」と、丸山事業部長は実証棟への自信を口にする。
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センサーと機器が連動するイメージ |
追い求めているのは、人と一体化した住まい。誰がどこにいるかを察知し、空調や照明、さらにはカーテンの開閉も含め温度調整を自動で行う。好みの温度をあらかじめ設定しておけば、部屋を移動するたびに快適な室内環境を演出してくれる。デザインセンターデザイン第一部コミュニティ担当の濱田美樹夫参事は「リストバンドからの発信データは健康状態を管理するだけでなく、状況に応じて担当医に情報を配信するような仕組みも考えられる」とアイデアを明かす。
今後の住まい提案として重要視する「ヘルスケア」の部分では、人感センサーから取得したデータの使い方がかぎを握る。同社は、市販を始めた活動量計のリストバンドも、別のデータを取得できるように機能を増す一方で、データ分析のプログラム開発も並行して進める。20年までにはトータルな仕組みとして商品化したい考えだ。
「家そのものが自らの好みに変化することで、住まい手の心にゆとりが生まれ、日々のモチベーションを高める副次的な効果にもつながる」(濱田参事)。府中工場の入口に建設された実証スマートハウスは木造2階建て延べ225㎡。4LDKの戸建て住宅ではあるが、展示技術はマンションへの導入もターゲットに据える。一般公開はせず、あえてディベロッパーやハウスメーカーなどの事業者に限定し、年間600人を見込む来場者に対し積極的に提案する。
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