2014/10/07

【担い手】「毎年度採用を」教育機関から苦言も! 北陸で育成推進協が初会合

産学官の連携による建設産業の入職対策という全国初の試みを開始した北陸建設界の担い手確保・育成推進協議会(座長・野田徹北陸地方整備局長)。「売り手」側となる教育機関にとっても切実な問題であるだけに、意見交換では本音も見え隠れする。企業側が旺盛な求人意欲を示す中、3日開かれた初会合では、長年の公共投資削減で新規採用を抑制せざるを得なかった企業側の姿勢に「計画性が感じられない」として教育機関が注文を付ける場面も見られた。
 初会合の意見交換で、ある工業高校の幹部職員は、建設企業の経営基盤の安定化に向けた努力を十分に認識しながらも、学生の将来設計を担う立場として「新規採用に関して計画性が感じられない」とあえて苦言を呈し、市場にそのまま連動するかのような求人の増減を批判した。安定的に就職先が確保されなければ、建設系学科の人気はさらに落ち込んでいくと訴えた。一方、少人数であっても毎年度採用を続ける建設企業が学生の大きな支えとなることを紹介。「先輩が在籍する企業は内情が見えやすく、入社後も頼りになるので、離職防止という観点からも(継続採用は)ありがたい」と謝意を表した。
 これを受けて、野田座長は「非常に貴重な意見」と応じた上で、「建設企業が適正な利潤を確保し、就労環境の改善や(実行的な)担い手の確保・育成に還元するための法改正が実現している。別の体制(北陸ブロック発注者協議会など)で法理念の浸透を図っていく」と説明。推進協はあくまでその前段にある建設界の魅力発信であることを強調しながら、「会合を通じて、各機関、団体間の理解を深めてほしい」と加えた。
 このほか、教育機関から「高校生の求人受付は7月1日から始まり、同月20日前後の保護者会で進路希望先が概ね決まるが、建設企業からの求人票提出は製造業に比べて若干遅いように思われる。また、新規で建設企業から求人があると、(交流がない分)どのように就職手続きを進めればいいか分からない場合がある」「大学の工学部は他学科との学生確保競争があるので、建設系学科に目を向けさせなければならない」「現場見学会は学生の講義と重なることがあり、希望があっても参加できない」「インターンシップは建設業界の適正や経験を積む上で貴重な場。長期間が望ましい」「学校では学習指導要領に基づいて授業を展開しているが、技術開発の進度に教育現場が追いつかない」などの声が上がった。
 推進協では、学生などに伝わるコンテンツを決めた。具体的な取り組みとして、実習プログラムでは、建設産業団体などからの協力の下、学校の敷地内での測量や左官、重機運転などを想定。実際の工事現場での作業体験も視野に入れている。
 現場見学会は発注者による工事概要説明だけでなく、当該校の卒業生を活用しながら、建設企業の現場代理人や若手、女性技術者の仕事ぶりを紹介。学生への見せ方を工夫することで、公共事業への興味を喚起する。
 学校の座学や講義の充実に向けて、行政機関による地域ものがたり講座(仮称)を開設する。構造物の造り方とともに、“なぜ、どうして社会資本が必要だったのか”という背景に触れ、地域の歴史をひもといていく。年間のカリキュラムとして組み込むことを検討する。このほか、求人情報や入職、離職状況などの各種情報を産学官で共有する。小中学生向けの活動や保護者を対象とする現場見学会なども計画する。
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