2014/06/13

【まちづくり】中心地区の道路管理を民間へ 府中市が先進的取り組み


 道路や公園など昭和30年代から40年代に整備されたインフラが一斉に更新時期を迎え、その対応が全国的な問題となっている。そうした中、先進的なインフラマネジメントに取り組む東京都府中市で、市政施行60周年に当たる2014年度、維持管理に向けた新たな取り組みがスタートした。市のシンボルとなるけやき並木をメーンに中心市街地を対象とした「けやき並木通り周辺地区道路等包括管理業務」だ。公募型プロポーザルで選ばれた前田道路・ケイミックス・東京緑建JVが16年度末までの3年間、試行的に実施する。道路などの日常的な巡回管理、不具合通報対応、補修など包括的に民間委託するのは全国でも初めての試み。試行の先には、地域や公園などへの対象拡大も視野に入れている。
【執筆者から:府中市のインフラマネジメントの取り組みは、基礎的自治体として3年先を進んでいる。今回の包括管理業務は、建設と清掃、造園の異なる業種がJVを組んで取り組んでおり、全国的企業と地元企業のコラボレーションも特徴だ。インフラ老朽化や自治体の財政的問題を解決する意味でもこの取り組みへの期待は大きい】

◆綿密な調整行い民間活力を活用

 道路管理は、市の職員が現場対応し、状況に応じて清掃、造園、建設といった業種別の企業に委託してきた。道路等包括管理業務は、道路の日常的な管理に民間活力を活用した管理制度。府中市では、各専門業種の企業で構成する企業グループを公募型プロポーザルで選定し、複数年間まとめて委託した。「工種ごとの委託をまとめることによるコスト削減と、民間企業のアイデアや新技術の導入、24時間体制など市民サービスの向上に期待している」(都市整備部管理課)。
 包括管理業務の委託には、綿密な調整が重要。対象地区、施設、業務範囲、各業務の要求水準、リスク分担などを詳細に明記している。

◆対象は市中心地区/導入拡大も視野


「馬場大門けやき並木」 源頼義・義家が奥州安部氏の反乱「前九年の役」(1051-1062年)の平定の途中、大國魂神社で参拝し、平定後もケヤキ1、000本を奉植したのが始まりと伝えられている。現在のけやき並木は、徳川家康が慶長年間(1596-1615年)も馬場を寄進し、両側にケヤキを植えたのが始まり。約150本のケヤキが植えられている
司馬遼太郎の小説『燃えよ剣』は、主人公の土方歳三が大國魂神社の「くらやみ祭」に向かうシーンから始まる。毎年5月、くらやみ祭でにぎわう神社の参道がけやき並木で、1923年に国の天然記念物に指定されている。

対象地域

対象となる北口ペデストリアンデッキ
対象地域は、そうしたけやき並木通りのほか、国道20号、都道府中調布線(第229号)、主要地方道所沢府中線(第17号)、新宿仲通りに囲まれた区域。委託業務は、幹線や市道19路線総延長3464mの道路、京王線・府中駅北口、南口のペデストリアンデッキ、街路樹、案内標識、道路反射鏡(カーブミラー)、法定外公共物(里道、水路)の清掃、軽微な補修、区域内の巡回、剪定(せんてい)などにまで及ぶ。
 市は、3年間の事業を通じて業務効果を検証し、事業エリアや公園などへの導入拡大も視野に入れながら検討していく。また、道路施設の管理情報の電子化に向けた検討も進める。GIS(地理情報システム)を利用した管理など、業務の手順や方法の効率化も検討し、導入時期を探っていく。

◆インフラマネジへ早期の取り組み


官民出席のもと開いた説明会
府中市は、道路、橋梁、公園、下水道などの都市基盤施設の多くが整備後30年以上経過しているため、その対策にいち早く着手。『インフラマネジメント白書』を12年10月に策定し、現状を詳細に把握。13年1月には「インフラマネジメント計画」をまとめ、従来の維持管理が財政的に難しいことを明確にした上で、市民生活の安全確保を目的としたインフラにかかる今後の管理方針を明示した。市民とまちづくりの方向性を共有するとともに「市民と協働のまちづくりを推進する」(高野律雄市長)との施政運営を明確にしている。道路等包括管理業務も、その具体策の1つ。さらに、道路や公園などの管理に市民の協力を求める「インフラ管理ボランティア」も始めている。

◆前田道路の取り組み/地域に根付いた長い“レース”

 「インフラの維持更新が大きな流れとなる中で、全国に先駆けてパイロット事業に取り組む。そうした姿勢に共感した」--。前田道路が応募するきっかけは、府中市のインフラマネジメントに対する先進的な取り組み姿勢だった。
 試行事業としての期間は3年。だが、同社は「10年から30年の“レース”だと思って取り組む」と本腰を入れる構えだ。全国に120カ所もの営業所を配置する前田道路は、営業所の敷地内に住環境に配慮した専属作業員宿舎を備え、災害などの緊急時には迅速に対応するなど、地域に根付いた事業を展開している。
 インフラマネジメント事業は、「当社の拠点を生かしてより地域に密接にかかわっていくいいきっかけになる」と判断したことが応募の理由と打ち明ける。事業スキームに、地元企業との連携・協力を盛り込んでいるのも自らを“地元企業”として市内企業と良好な関係構築を心掛けてきた姿勢の表れといえる。
 各市町村での維持管理の実績に裏打ちされたノウハウをもとに包括的なマネジメントに踏み込んだわけだ。具体的な提案が、管理業務の電子化。前田建設の協力を得て建物履歴管理システム「アイクロア」を土木系インフラの維持管理にカスタマイズして、今回のプロジェクトで活用していく。位置情報も明確化し、道路を始め、ペデストリアンデッキから街路樹、カーブミラーなどに至るすべての管理対象について、日常の巡回から報告、データのやり取りなどインフラに関する情報をデータベース化し、行政・民間双方が活用することで効率的な管理につなげる。また、チェックシートなど一部アナログ的な部分をあえて残し試行的に利用することで電子システムの充実・拡充に役立てる。「市とすり合わせをしながら今後3年間掛けて、より良いシステムにしたい」(同社)考えだ。
建設通信新聞(見本紙をお送りします!)

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