2014/06/27

【日本下水道事業団】このままでは調査に100年! 下水道老朽化に挑むJSの闘い

老朽化した社会資本の維持管理・更新事業の重要性が高まっている。導入から100年以上が経過した下水道もその1つで、建設中心から改築・マネジメントの時代へと突入している。東日本大震災では640㎞以上の下水道管路が被災し、汚水の溢水などが発生した。発災直後から復旧作業に当たっている日本下水道事業団(JS)では、これまでの経験で得たノウハウを生かした新たな技術開発が日々進められている。日常生活になくてはならないインフラである下水道の安心・安全の実現に向けた取り組みとして、下水道管路マネジメントシステムを紹介する。写真は、実証事業の調査で発見された管のひび。

 下水道管路の国内の普及率は約76%、管路の総延長は約45万㎞に達している。そのうち約1万㎞が、下水道管路の標準的な耐用年数とされる50年を超えており、検査の目安となる30年を経過しているものも含めると約11万㎞に及び、全体の約5分の1を占める。下水道管路は道路の地下に埋設されているため目視による現状の確認は容易ではない。見えないところで老朽化し腐食やひび割れなどが発生した管に地上からの衝撃が加わると、道路陥没が発生する。これらに起因する道路陥没は年間4000件にもなり、その対策が急務となっている。

◆低コストで効率的新技術を実証実験

 JS事業統括部の山本哲雄アセットマネジメント推進課課長代理は、「管路の調査には時間と費用がかかるため、なかなか現状把握が進んでいない。事故を未然に防ぐためには現状を把握することが大切なので、低コストかつ迅速化の調査技術が必要」と話す。
 現在行われている下水道管路の調査は、ロボットで撮影した管路内の画像を作業員が目視で確認して不具合個所を記録する方式で、1日の調査延長は200-300m程度。調査には膨大な時間と費用がかかるため、自治体での取り組みがなかなか進まないのが現状だ。1年間で調査できるのは全体の1%に当たる約4500㎞、すべての管路を調査するには100年程度かかることになる。

実証事業の調査で発見された下水管路の欠陥。木の根が突き出している
JSは2012年度から、NECと共同で新たな技術開発に着手。13年度には国土交通省の「下水道革新的技術実証事業(B-DASHプロジェクト)」に採択され、8月から千葉県船橋市内の管路を対象に実証事業を開始した。1日1000mの調査を目標に調査ロボットの開発を進め、これまでよりもコンパクトな機材でより効率的な調査を可能にした。実証事業は14年3月まで実施し、現在は、国交省国土技術政策総合研究所が公表に向けたガイドラインのとりまとめ作業を進めている。

◆重要度と経過年数で優先度決め調査

 「下水道維持管理指針では、管の重要度によって7-10年のスパンで適宜調査することになっている。管路の重要度と経過年数を合わせ、優先度を考えて、計画的に調査を進めていく必要がある」と話すのは同部計画課の新井智明課長代理。「今回の技術は道路陥没を未然に防ぐための技術。これまでは本当に緊急性の高いエリアを対象に調査をしてきたが、今後はそうなる前に、ある程度欠陥が出てくるだろうというエリアで新しい技術を使っていきたい」と力を込める。山本課長代理も「市町村の調査が進むような仕組みをつくり上げ、下水道のアセットマネジメントを推進したい」と、管路の維持管理拡大への期待を語った。

◆調査ロボットが不具合を自動検出

下水道管路マネジメントシステムで使用される調査機材一式。これまでは専用の機材を積んだワゴン車などがひつようだったが、コンパクト化し操作性も向上した
ステレオカメラとセンサーを搭載した全長約120cmの調査ロボットが下水道を走行し、カメラから取得した映像から不具合を自動検出することで、作業効率の大幅な向上と調査精度のばらつきを抑制するもの。ロボットに小型で低消費電力のCPUを搭載することで、ロボット内部での消費電力を抑えた情報処理と、内蔵電池による長時間駆動を可能とした。また、強い力で引っ張っても破断しない独自のケーブルを使用することで、ロボットの走行可能距離を延伸する。
 7月にインテックス大阪で開かれる「下水道展’14大阪」の事業団の展示ブースで、実機を展示する予定だ。
建設通信新聞(見本紙をお送りします!)

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