2011/07/27

わたしのこの一冊・S字カーブのプロジェクトX

『上越新幹線物語1979-中山トンネルスピードダウンの謎-』
 新幹線のトンネル内での減速。読書やおしゃべりしていたら、まず気付くことはない。今や簡単に見ることができるようになった航空写真を見ても、トンネルの出入口はなめらかな線形で結ばれていると想像する。ところが上越新幹線の中山トンネルに路線図を重ね合わせると奇妙なS字カーブが存在し、ここで新幹線は時速240㌔から160㌔に減速する。このS字カーブにまつわるプロジェクトX。それがこの物語。
 トンネル工事を苦しめ続けたのは「水」。ただ、2度も大規模な出水事故が発生した難工事であったが、一人の犠牲者も出なかった。立坑内に閉じ込められた51名の奇跡的生還、渇水問題で深まった地域住民との信頼関係、水没したトンネル復旧のための注入工法に投入された最大90台のボーリングマシンが林立する“中山銀座”。いずれも感動、そして圧巻。著者曰く「土木技術者にとって、地図に残るものを造ることは夢」。心に残る1冊です。
(成瀬文宏=中部地質調査業協会副理事長、基礎地盤コンサルタンツ中部支社長)

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