2012/07/04

埼玉・滑川町の「興長禅寺客殿」新築 宮大工の技術生かす角嶋社寺設計室

工事が進む興長禅寺客殿
 日本古来から引き継がれる寺社建築の基本を踏まえつつ、伝統の持つ美しさを追究する角嶋社寺設計室(角嶋克夫代表)。7月に完成する興長禅寺客殿新築工事(埼玉県滑川町)では、100年以上使用し、後世に引き継がれる建築とするため、材木のほとんどに国産のヒノキやスギの無垢材を使っている。木材の自然の風合いが心地よい空間を醸しだし、訪れる檀家や参拝者のもてなしの場となる。

 曹洞宗・興長禅寺の客殿として、書院造りのシンプルで力強い外観とした。和室21畳2部屋、8畳2部屋、応接室などを備え、木造平屋建て約270㎡となる。屋根は隣接する本堂との統一感を持たせるため、銅板屋根を採用している。
 柱にはヒノキ、化粧材にはスギの無垢材を主に使用。床の間の主役となる床柱には、深い年輪の刻まれたヒノキの銘木を配し、天井の杉板には多様な笹杢(ささもく)の木目が表れるなど、木材特有の美しさを表現している。施工は松浦建設(石川県能美市)。
 「何代も引き継がれる社寺建築には、歴史的に長寿命が証明されている無垢材を使うのが一番。板を接着剤で貼り合わせた合板を使わないため、屋内が自然の状態に近い。天然の木材が心身にもたらす快適さを体感できる」とその効果を語る。
 素材の良さがそのまま出るだけに「木造社寺建築には嘘のない真摯(しんし)な気持ちが最も大切」との想いで設計に臨む。
 無垢材中心の木造建築を造るには「宮大工の技術が不可欠」とも。その魅力をPRする見学会を開くなど技術の継承にも心を配る。

『図説 日本建築のみかた』 AmazonLink

Related Posts:

  • 世界初の連結型蓄熱槽でピーク電力55%OFF 東京電機大の千住キャンパス 校舎内のシャフトに設けられた蓄熱槽 東京電機大学は、東京千住キャンパス(東京都足立区)にヒートポンプ蓄熱システムと最先端の省エネルギー技術を使い、ピーク電力を55%削減することに成功した。夏季にピーク電力を迎える平日の昼間2時の7月の開校日平均実績は1500㌔ワットで、蓄熱システムを導入しなかった場合の試算と比べると約40%減、約1000㌔ワット減り、キャンパス全体に施した各種エネルギー技術を導入しなかった場合と比べると約55%減、約190… Read More
  • ブータンの人はなぜ幸せなのか? 千葉工大の建築がシンポ開催 千葉工業大学建築都市環境学科は、3年間にわたるブータン王国の伝統住居・集落の実測調査研究を踏まえたシンポジウムを、東京都港区の建築会館で開いた。古市徹雄教授を中心とする調査団が、講師に招いた月尾嘉男東大名誉教授らと、同国の状況やコミュニティーのあり方を話し合った=写真。  コミュニティーデザインをテーマに講演した山崎亮京都造形芸術大教授は、島根県海士町で総合計画づくりに携わった事例を挙げ「住民が自ら動き出せば人と人との結び付きが強くなる。その… Read More
  • インドの最先端建築に触れる! スタジオ・ムンバイ展、ギャラ・間で始まる インドを代表する建築家、ビジョイ・ジェイン氏が率いるスタジオ・ムンバイの展覧会が、東京都港区のTOTOギャラリー・間で始まった=写真。ジェイン氏の指導のもと100人を超える職人が、自然素材や伝統技法を駆使して建築に取り組む「PRAXIS=実践」の過程を紹介している。 スタジオ・ムンバイは、造成から設計、施工に至るまで、建築をほぼ人の手だけで完成させる。 展覧会にあわせて来日したジェイン氏は、会見で「思考と身体、心が統合され、一体化していること… Read More
  • 「素材に対するリアル感が必要」 多摩美図書館の家具を担当した藤江和子氏 講演する藤江和子氏 日本建築美術工芸協会(aaca)は7月27日、東京都渋谷区の建築家会館で、インテリアプランナーの藤江和子氏を招き講演会を開いた。藤江氏は、「時代に応じて建築は変わり、家具のあり方も変わる。空間体験が変化せざるを得ない中で、家具デザインを通じてダイナミックな提案をしたい」と述べ、時代と人、建築と人をつなぐインターフェースとしての家具デザインの役割を強調した=写真。 藤江氏は「人と人をつなぐ場を作るために」をテーマに、198… Read More
  • 日本人のお祭り行動をデジタル化 東京理科大とSci-arcがコラボレーション 両校の学生で真剣にワークショップ 東京理科大学理工学部建築学科の学生らで運営する「TUS Digital Studio」と南カリフォルニア建築大学(サイアーク、Sci-arc)の学生らで組織する日本スタジオのコラボレーションが実現した。この催しは「MATSURI HACKING」と名付けられ、毎年靖国神社で開かれている「みたままつり」での日本人の行動をGPS(全地球測位システム)調査し、3次元グラフィックソフト「Maya」を使った流体解析シ… Read More

0 コメント :

コメントを投稿