2012/02/28

「世界最大水深の防波堤」を復活へ 釜石港の湾口防波堤本格復旧が着工

東日本大震災で「世界一の防波堤」も被災した
 東日本大震災で甚大な被害を受けた釜石港湾口防波堤の本格復旧事業着工式が26日、岩手県釜石市内の同港須賀地区公共埠頭(ふとう)で開かれた。発生頻度の高い津波から港や市街地を防護するだけでなく、最大クラスの津波にも減災効果を発揮する「粘り強い構造」を採用。2015年度末の事業完了を目指す。

 釜石港湾口防波堤は、古くから幾度となく津波被害を受けてきた釜石湾沿岸を津波から守るため、1978年に直轄事業として工事着手した。長さは北堤990m、南堤670mの計1660mで、設置最大水深はマイナス63m。10年7月には「世界最大水深の防波堤(Deepest breakwater)」としてギネス新記録に認定された。
 しかし、東日本大震災の津波により北堤のほぼ全域が倒壊。南堤も南側の約360mが港内側に倒壊した。
 防波堤が津波をせき止めたことにより、港内外に極端な水位差が発生し、港内側に押されたことが主な原因だ。また、港内側の基礎マウンドが越流により洗掘されたことなども影響し、ケーソンが滑落した。
 本格復旧に当たって東北地方整備局では、数十年から百数十年に一度の津波として考えられる明治三陸地震津波を設計津波とし、湾口防波堤と防潮堤の効果的な組み合わせによって港湾と市街地を防護する方針を打ち出した。湾口防波堤の高さは既設と同じ満潮水位プラス5・1mで復旧し、防潮堤は一部かさ上げする。
 また、設計津波を超える高さの津波に対しても減災効果を発揮する「粘り強い構造」を採用。具体的には港湾内の基礎マウンドをかさ上げしてケーソンの滑落に抵抗するとともに、ブロックで被覆することで基礎マウンドの洗掘を防止する。現在、水理模型実験を行っており、その結果を設計に反映させる考えだ。
 復旧工事は南堤と北堤(開口部含む)の2工区に分けて実施する。南堤は被災ケーソン2函を撤去した上で、ケーソン9函を製作し、15年1月までに築造工事を完了させる予定だ。
 一方、北堤は被災ケーソン19函を撤去し、新たに37函を製作。マウンドができ次第、ケーソンの設置を進め、16年3月の完成を目指す。総事業費は約490億円を見込んでいる。

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