2011/07/01

覆面記者座談会・july.01.2011

宮城県・女川の被災地
■二重ローンが復興の足かせに
A 政府にようやく復興対策本部が設置され本格的な復興へ向けた動きが出始めた。これは被災地や被災企業にとって大きな期待になっているのかな。
B 予算手当を復興のために手厚くするという意味では、被災地自治体、地元企業にとって大きな希望になっているのは確かだと思う。
C もう一つ。東北隣接地域の地方建設業界が復旧・復興に関連して建設市場が拡大することに対し強い関心を持っているのは事実みたいだ。現に、被災地に出張所開設という話も出ている。過去の新潟中越地震でも同様の話があった。ただ、これは大臣許可企業というより知事許可企業の動きだと思う。
D でも被災地の現状と今後想定されることを考えれば、そんな甘い話ではないと思うよ。
A 具体的には。
D 被災した各地でいま行われているのは、陸上のがれき撤去と港湾・漁港復旧のための海中がれき処理。それと腐敗した冷蔵・冷凍水産加工物の処分だ。
B いま、被災企業にとって最大の課題の一つは二重ローン問題だ。地方の地域経済を下支えする建設業など中小企業、漁業、農業者にとって、これまでの負債を抱えながら新たな事業展開するための新たな負債は抱えきれない。阪神・淡路大震災の時も、二重ローン問題は指摘されながら結局、棚ざらしになった。今回は沿岸地域500㌔にわたる各地域で二重ローン問題が発生する可能性がある。

■持続できる産業再生が今後の課題
D あと二重ローン問題は目の前の課題だと思われがちだけど、今後の地域復興に大きな影響を与えることを忘れてはいけない。今後、被災地域の自治体にとって一番問われるのは、地域を支える産業の再生・再構築だ。言い換えると街づくりかもしれない。
A でも県や自治体ごとに復興ビジョンづくりは進んでいるけど。
D 言っているのは、国の支援を受けた一義的な街づくりじゃない。1億3000万人の日本の人口、もっと狭まれば生産年齢人口が減少し高齢化が進む中で、復興を通じて持続的な地域をどう維持できるか。裏返せば、雇用や若い人材が確保できない地域は新たな街づくりをしても将来的に衰退してしまうという、日本各地で今後直面しかねない、根本的課題があるということだ。
C 港湾・漁港を抱える、ある被災自治体の首長は「漁業は主要産業。だから復旧・復興を通じて、漁協に対しては漁業の今後について自ら真剣に考えてほしいということを、これから言わざるを得ない」と明言していた。じつは、この首長は「今後数年間、復旧・復興作業を通じて、建設業も活力を取り戻してほしい。でもそれ以降の工事は確保できない。その間に地元建設業も地域でどうしていくかそれぞれ考えてほしい」とも言っている。
A 雇用を創出し若い人材を確保しながら新たな街づくりというが、被災地すべての市町村でそんなことできるわけがないと思うけど。
B だから一方で、限られた予算を選択と集中で、効果的・合理的な復興へ投資するとの考え方が出始めている。
D じつは、先だって岩手県の被災地を訪れたとき、感動したことがあった。津波被害でJR含めすべて壊滅的被害を受けた地区で、閉鎖されていたガソリンスタンドが営業を開始していた。ホームだけを残して跡形もない場所にあった建物名の説明をしながら店員の若者が最後に言った、「仕事ができて本当にうれしい。必ずここも元に戻りますからまた来てください」という言葉はなぜかうれしかった。

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