ことしもまた、暑い季節がやってきた。空調の効いた室内での作業と違い、建設作業は屋外での作業が中心となり、肉体的には過酷なものとなる。汗で張り付いた作業着は体にまとわりつき、見た目の悪さだけでなく、動きの邪魔もする。汗をかいたら、塩分と水分の補充は欠かせないが、それとは別に機能性素材を使った作業着で、夏場の作業を快適に、動きやすくすることもできる。東レの機能製品担当者に、夏の快適作業を支える繊維について聞いた。
近年、スポーツウエアを中心に、汗を急速に吸い、発散させるウエアが人気を高めている。基本となるのは、夏の暑さの中でも肌にべとつかず、さらっとしていること。いわゆる「吸汗速乾」で、繊維が吸った汗を早く乾かすことがミソだ。このことにより「気化熱で涼しくする」(木村寛前機能製品事業部長)ことができるという。
その例として挙げるのが、通常の断面が丸い単繊維と、断面が星形の単繊維をランダムに配列して作った製品(製品名=スプリンジー)だ。2つの異なる断面形状を持つ単繊維を、ランダムに配列することによってできた極細のすき間を利用して毛細管現象で汗を吸いとる。このすき間が広いと毛細管現象による吸汗量が少なく、逆に狭すぎると詰まってしまう。適度な間隔を保ちつつ、星形単繊維によって表面積を広くすることで汗の拡散性を高めた。
同時に、星形断面の繊維を混ぜたことで、さらっと感も持たせることができた。通常のTシャツに比べ、同じ厚さなら洗濯後の乾きも早い。セラミックを練り込んだ特殊ポリマーを使うことで、透けの防止や紫外線カット効果もある。
現場作業では、当然、作業着は汚れる。そこで気になるのが洗濯した後のこと。「物理的な耐久性は、ポリエステル65%、綿35%という普通の生地と変わらないし、何回洗濯をしても、吸汗速乾機能は落ちない」(木村前部長)。
さわやかな作業着で、涼しげに働く。建設業に対する周囲の視線が変わるかも知れない。
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