2011/07/08

覆面記者座談会・july.08.2011 「松本復興担当相の辞任ってどう思う?」

村井知事(左手前)と会談する松本前復興担当相(右端)
■「自分はお客さん」では復興相務まらない
A 復興担当相の松本龍氏の辞任劇には驚いたが、村井嘉浩宮城県知事との会談は実際どうだったのかな。
B 報道されているとおり、知事の出迎えがなかったことで、最初から機嫌が良くないように見えた。それで、上から目線で命令口調。聞いていて「何様だろう」と思ってしまった。
C 内容もむちゃくちゃだったのかい。
B 全部がそういうわけではない。例えば「それぞれのまちで伝統や文化、産業が違うので、しっかり話を聞きながら取り組んでいく」と言っていたし、仮設住宅での孤独死を防ぐためのアイデアも披露した。
A そうだったのか。そういう部分はあまり報道されていないね。
B そうだね。「政府に対して甘えるところは甘えていい。こっちも突き放すところは突き放す」といった言葉がきつすぎた。それと村井知事が松本氏を出迎えなかったことを叱責してしまった。
C 震災復興という大事業を進める上で「自分はお客さん」という考えの大臣では務まらない。遅かれ早かれ、こうなっていたかもしれないね。
A では、新しい平野達男前内閣府副大臣はどうなのかな。
D 人当たりが良く見えるから、松本氏の二の舞にはならないだろう。ただ、今までを考えると、平野氏が出てくると必ず何かあつれきを起こしている気がする。
E 結構、強引に物事を進める人と見られがちだけど、今までを見ていると、実はすごい調整型の人で、それがあつれきを生んでいたりする。

■復興と全国の防災対策 分けて議論を
A 復興担当相になった当日の内閣部門会議では、中期財政フレームで財政再建論を強く主張していたみたいだ。
E 「震災、原発、財政、いずれも同じくらいの危機」と言っていた。国家戦略担当の副大臣という立場上の言葉という見方もできるけど、あの財政健全化論はもはや持論になっているみたいだ。
D 平野氏のホームページでも、4月に財政健全化の必要性を説く論文を掲載している。内閣部門会議で言ったこととほぼ同じ内容だ。
A でも、それで復興担当相になれば、復興に向けた事業への歳出も抑制しかねないんじゃないか。
E 単純な歳出削減論者ではなく、歳出削減と歳入増が必要という考え方。消費税増税に向けた議論を歓迎していたから、税収増との兼ね合いで歳出の削減幅も変わってくるということだろうね。ただ、復興に向けた財源として「復興債」を盛んに言っていた。
A 公共事業は復興だけで、全国的な公共事業は抑制という方向に向かってしまうのでは。
D それはまさに財務省の論理だ。平野氏の財政健全化論も財務省の論理とほぼ同じだから財務省に操られているという見方もできる。だとすると、復興事業は補正予算、当初予算は抑制という論理になるだろう。
E でも、全国的な防災対策や津波対策も必要だ。一般会計における公共事業として、津波防護施設の整備などが必要になる。復興債による復興事業の話と一般会計の公共事業を混同すべきではない。
E でも、財務省が強ければ復興事業用で押し出されて全国的な公共事業が今までよりさらに抑制される可能性だってある。前原誠司元国交相や馬淵澄夫前国交相のような押しの強い人でも財務省には抗しきれなかったけど、大畠章宏国交相には頑張ってもらわないと困る。今のうちから建設業界など関係者もきちんと警鐘を鳴らしておかなければ大変なことになる。

Related Posts:

  • 【記者座談会】注目浴びる小池都政の「東京大改革」 入契制度改革は幅広い議論を A 小池百合子東京都知事が誕生して4カ月が過ぎたね。 B 築地市場の豊洲移転延期や五輪競技会場の見直しでマスコミに取り上げられ、その姿をニュースで見ない日がないほどの注目ぶりだ。C 「東京大改革」を掲げて知事選で大勝し、その公約を実現するため、就任後直ちに都政改革本部を立ち上げた。五輪競技会場見直しは、その都政改革本部に顧問として迎えた外部有識者を中心に進められた。D 復興五輪を前面に打ち出し、ボート、カヌー・スプリント競技会場を東京臨海… Read More
  • 【記者座談会】回復基調が鮮明になった2016年を総括 各分野ごとに振り返る  建設産業界にとって2016年は、公共・民間工事とも堅調な受注環境のなか、企業経営の先行きを示す手持ち工事高も順調に積み増したほか、足元の収益についても大手・準大手を中心に回復基調が鮮明になった年だった。さらに地方の公共事業量についても、昨年来から問題となっていた地域間格差是正へ、16年度第2次補正予算が配分されるなど、地方再生への政策的配慮が届いた。一方、品質問題と重大事故発生によって、「品質」「安全」が、ものづくりの原点であることを業… Read More
  • 【記者座談会】“新しい街”晴海埠頭の選手村が17年1月に着工 五輪後の活用に課題 A 2020年東京五輪・パラリンピックのメイン会場となる新国立競技場の起工式が11日に開かれたね。 B 安倍首相が白紙撤回した旧計画では昨年10月に着工予定だったので、1年2カ月遅れてのスタートだ。大成建設・梓設計・隈研吾建築都市設計事務所JVが設計と施工を担当し、工期は約3年。大成建設の山内隆司会長は、起工式のあいさつで「限られた期間内で大規模なスタジアムを整備するという国内でも過去に例がない難しいプロジェクト」と強調し、「設計・施工・… Read More
  • 【記者座談会】業績好調のいまこそ処遇改善を/異業種も注目するインフラメンテ市場 A 過去最高益の更新が相次ぐなど、ゼネコンの中間決算が好調だけど、日本建設業連合会加盟企業(97社)の受注状況はどうかな。 B 2016年度上期(4-9月)の国内受注額は過去20年間で2番目に高い7兆2320億円だった。20年東京五輪に伴う需要増で、当面の受注環境に大きなマイナス要素も見当たらない。10月単月の受注総額は前年同月比6.6%増の9950億円で8月以降、3カ月連続増加した。4月からの累計受注額も8兆2790億円となり、高水準を… Read More
  • 【記者座談会】“稼げる”スタジアム・アリーナへ改革なるか 五輪契機に新たなまちづくり  A 東京五輪の競技会場見直し議論も大詰めのようだけど、金額の多寡にばかり目が向いているように感じる。写真は五輪後も建設ラッシュが続くロンドン市内。大規模な再開発が活発化している B 確かに「レガシー」という言葉はすっかり色あせた感がある。巨額の建設費は「負のレガシー」と見えるのかもしれないけれども、コスト削減が目的化してしまうとかえって五輪限定の施設となってしまいかねない。C 要は“金食い虫”のコストセンターから、新たな収益を生む産業基盤と… Read More

0 コメント :

コメントを投稿