タワークレーン先端の操縦室の簡易トイレとして普及した日本セイフティーの自動ラップ式トイレ「ラップポン」が、熊本地震の被災地で活躍している。水を使わず、特殊フィルムで排泄物の臭いや菌を密封する革新的手法が、避難所のトイレ環境の改善に貢献している。
ラップポンは、便座に取り付ける自動ラップ機構で排泄物を1回ごとに特殊フィルムで包み込み、熱圧着で切り離して個包装する。臭いや菌を外に漏らさない特殊防臭フィルムで密封するため、2次感染を予防するのが特徴だ。専用凝固剤で水分を固めるため紙おむつと同様に処理することができる。
2005年に高齢者向け仮設トイレとして発売して以降、医療や介護だけでなく建設現場、災害対応などの分野で幅広く実績を積んできた。これまでに民間企業、官公庁、自治体などで1万台以上が導入されている。
建設現場では特に、タワークレーンの操縦室の環境を改善するとして瞬く間に普及した。オペレーターは1日中操縦室にいるため、休憩、食事、トイレを限られた空間で完結させる必要がある。従来の仮設トイレに比べると、ラップポンはコンパクトで衛生面でも非常に優れるため、オペレーターに支持されている。スカイツリーの建設工事で使われた“日本一の高さ”のタワークレーンでも実績がある。
そのほか、地下鉄のシールド工事といった密閉性の高い空間や、高速道路の補修工事などトイレの設置が難しい現場でも普及が進んでいる。
◆災害医療チームや医師から要請
東日本大震災などの被災地支援でも高く評価されており、熊本地震では発生直後に現地入りした災害医療チームや医師からラップポンを要請する声が上がった。日本財団が災害医療ACT研究所(宮城県石巻市)に災害支援物資としてラップポン500台を提供したことを受け、日本セイフティーは災害医療ACT研究所と協働で災害支援チームを結成し、「ラップポン絆プロジェクト」として被災地での設置活動を進めている。同時期に、政府調達で50台を配備することも決まった。
ラップポン事業部の佐久間快枝事業部長は「通常の仮設トイレは段差を上れないお年寄りや体の不自由な人には使いづらい。設置場所が避難所から離れる場合、夜間は危険も伴う。水がなくても使用でき、2次感染の恐れもないことが室内での使用に向いていた」と説明する。避難所では衛生状態が大きな課題になるため、医師ら災害医療チームからの評価も高い。「被災者の生活環境と健康の確保に貢献したい」と力を込める。
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