「私たちは自然の材料をもっと尊敬してよいのではないか」。建築家の隈研吾氏はこう語る。中国やフランス、米国など世界中で「場所と建築の一体」に挑戦してきた隈氏は、日本人が里山の資源を頼りに、自然に寄り添い暮らしてきたことについて、「かつて黒川紀章氏らが提唱したメタボリズムに通じるものがある」とした。5月18日に岐阜市のぎふ清流文化プラザ長良川ホールで行われた「公共建築物の木材利用推進シンポジウム」の一コマ。
木造建築物は経年などで傷んだ個所のメンテナンスがコンクリート構造物などに比べ容易なことから、公共建築物における木材利用は「これから到来する産業革命以降の自然共生とエネルギーと物質の再生、循環型社会のためには欠かせない」と語るのは岐阜県立森林文化アカデミー学長も務める涌井史郎東京都市大教授。
隈氏は、「世界では木の建築に対する評価が高まってきている」という。その中で日本は「圧倒的な技術と知恵」を持っており、また木材の利活用に強い意識をもつ若い構造設計者の情熱は「目を見張るもの」があると期待を寄せる。
公共建築協会の春田浩司会長も、近年、公共建築賞への木造建築物の応募が増加傾向にあるとした上で、新国立競技場の設計について触れ「哲学と高い技術を併せ持つ隈氏が木材をデザインに採用したことは、利用に向けた大きな弾みとなる」と語った。
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