新国立競技場 Cox案 (Photo:Cox Architecture) |
アラスター氏 |
--まず、新国立競技場の提案のポイントは
「スタジアムのシェルは、オリンピックスピリッツを表し、楽しみを全面に出した『ファン・ファースト』という考え方を取り入れた」
「卵形のシェルは透明で、ダイアグリッド構造を取り入れ、内部には木製のスタンドを配置している。日本の技術や伝統についても表現しているつもりだ」
--日本の伝統というのは、どの部分に取り入れたか
「シェルの部分に透明な光を、スタンドには日本の寺社建築構造部材である木を使ったことだ。木という材料は、クラフトマンシップが一番発揮される素材だ。スタジアムの質感をこうした材料でつくりたかった。また4つのスカイガーデンを設定した。これらはそれぞれのランドスケープによって、日本の四季を表現する」
「私たちが暮らすオーストラリアにも四季はある。1日のなかでも移ろいを感じることができる。われわれがスタジアムをデザインするとき、こうした環境をまず考える。太陽が顔を出せば暖かいと感じ、夏季に観戦中は太陽が暑いと感じる。提案のなかで、スタジアムの屋根が太陽や光をうまくコントロールするように考えた」
◇ザハなどについて
--他の提案について、どのように感じたか
「ザハ・ハディドの提案は、とてもクレバーだと感じた。SANAAと日建設計の提案は、コンクリートでありながら上手に曲線を出している」
--日本で国立競技場のような大きなコンペは珍しいが、ほかの国際コンペと比べて、どのように感じたか
「オリジナルな募集要項であることが特徴だった。国際的な建築賞の受賞経験や、大規模スタジアムの設計実績を求めていた。有名建築家を集めるという意味では、ストレートな要望だ。オリンピックは国際的なイベントであり、ショーケースとなるので、そういう判断となったのだろう」
--日本の建築についてどう思うか
「SANAAは、美しく完成された建築家だと思う。また日本には若く、美しい技巧を持つ建築家がいる。欧米はビジネス面に重きを置く建築も多く、技巧を凝らす建築は貴重だ。コックスも、技巧的な建築を目指している。オーストラリアにも、技巧を凝らす建築を目指している若い人がおり、彼らは、住宅設計などを手掛けている」
アデレードの『Adelaide Oval Redevelopment』 (Photo:Cox Architecture) |
--コックスは、どのようなプロジェクトにかかわってきたのか
「当社のスポーツ施設部門では、多くの大規模プロジェクトを経験している。アデレードの『Adelaide Oval Redevelopment』は、クリケット場の再開発プロジェクトだ。このプロジェクトは2つのパビリオンを配置し、非常に技巧的な建築となっている。歴史のあるクリケット場を再構築するが、スコアボードは120年前のものを使用する」
--コックスの今後の展開は
「豪州では、西オーストラリア州政府が進めている『パーススタジアム』プロジェクトがある。これはPPP手法を活用した大規模プロジェクトだ。このスタジアムのほか、クライストチャーチの震災復興関連の計画に参加している」
「オリンピックは4年ごとに開催され、サッカーワールドカップでもスポーツ施設の需要はある。こうした案件に取り組んでいきたい。また、これからは、環境やサスティナビリティが重要だ。建築に何ができるのかを考えながら、この大きなテーマに取り組む」
--日本との今後の関係についてどう考えるか
「われわれは、アジアにおいてジャカルタのコンベンションセンターや、インド、中東、中国でも多くの案件を担当している。アジアの一員として、パートナーシップの構築を進めている。日本や日本の建築家ともポジティブな関係をつくり、仕事をしていきたい。今回の国立競技場コンペはその良い機会となった」
建設通信新聞(見本紙をお送りします!)2012年12月20日14面
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