ボブスレーのように人が寝そべった状態で搭乗する「バッテリーロコ」 |
ミニシールド機は、深さ13mの発進立坑を出発後、5%の勾配で下りながら280mを掘り進み、その後、水平方向に進路を変えて682m掘進した。土被りは9mから25m程度。平面線形は6カ所の曲線があり、最小曲線半径は150mだった。
途中には、JR東海道線など6線の基礎杭や市営地下鉄ブルーラインの下を通過するポイントもあったが、「地盤や列車の安全輸送に影響を与えないよう、施工には非常に神経を使った」と酒谷直行所長は振り返る。
シールド内径は1000mmしかないため、セグメントや土砂の運搬には、ボブスレーのように人が寝そべった状態で搭乗する「バッテリーロコ」が活躍した。これを動力源とし、立坑とシールド機の間で土砂スキップやセグメント運搬車を行き来させた。
◇現場の一体感
住宅地に位置し、地上の旧国道1号を夜間片側交互通行に規制しながら築造した到達立坑も難所の一つだった。
深さ26mの到達立坑は、内径が2.5mと狭い。「夜間施工のため、騒音の少ない電動式の小型バックホウを投入し、立坑を掘っていった。バックホウは降雨に備え、毎日出し入れする必要があったが、クレーンで降ろす際に介錯ロープを操る人が入るスペース的な余裕はない。このため、立坑内にガイドレールを設置し、それに本体をつけながら下降させることで、バックホウが回転しないように工夫した」(酒谷所長)。
シールド機や防音ハウス、工事概要パンフレットなどの至るところに、『みんなで力を合わせてがんばろう日本』の文字と日の丸を掲げた。
酒谷所長は「薬液注入工を担当した協力会社の社員と作業員が、福島第一原子力発電所から海へ流出した高濃度汚染水を止めに行くことになった。必ず無事に帰ってきてほしいとの思いを込めた」と語る。昨秋に実施した到達立坑の地盤改良工は、大役を果たして帰還したメンバーが施工に当たってくれたという。
酒谷所長には、工事終了後のこだわりもある。工事中の協力願いや不便を詫びる看板は多々あるが、お礼の看板を現場周辺に設置することだ。「公共事業だから、協力してもらって当たり前ではない。近隣住民やドライバーを含め、すべての人にお礼を言いたくて職員一同で看板を立てた」とほほ笑む。
建設通信新聞(見本紙をお送りします!)2012年12月14日3面
0 コメント :
コメントを投稿