こどもがスタンプでまちの未来を描く |
ワークショップ |
地元の復興支援組織や地元有志と東京の学生、建築家で構成する久之浜大久地区まちづくりサポートチームは10月20日、久之浜・大久復興祭「奉奠祭花火大会」に合わせてワークショップを開いた。
チーム代表の一人で建築家の栗田祥弘氏(隈研吾建築都市設計事務所)は「復興は1、2年後のことを考えても始まらない。30年後のまちがどうなっているのかを想像し、いま何をすべきなのか考える必要がある」と強調する。
ワークショップでは、いわき市が構想する沿岸部の津波防災緑地化計画を基に、「にぎわい」と「防災」を軸としたチーム計画案を提示した。
被災前の沿岸部は、防潮堤の内側にすぐに住宅があった。防災面の問題がある一方で、海を身近に感じられた。栗田氏とともにチーム代表を務める建築家の基真由美氏(M・A・D一級建築士事務所)は「緑地帯をつくるとマイナス面もある。海との関係をどのように守っていくのかがポイントとなる」と、安全性を最重要課題にしながらも、これまでの地域特性を生かすことも将来のまちづくりには必要と指摘する。
地図に描かれた記憶 |
提示された4つの案に対して住民が投票したところ、緑地帯を緩やかな丘とし、かつての浜のようにハマエンドウを群生させる提案が最多得票だった。結果的に、海とともにあったまちの記憶が、潜在的に住民の意識の中にあることが分かった。集計結果は復興計画の資料として提出する予定だ。
ワークショップはこのほか、スタンプを使ってまちの絵を描くイベントや、地図を転写した机に被災前のまちの記憶をマッピングする取り組みで盛り上がり、世代を超えて記憶をつなぐまちづくりへ期待を膨らませた。
久之浜地区は、福島第一原子力発電所から南に約30㎞の距離に位置する。津波被害に原発事故への不安が重なり、ほかの被災地に比べると復興のハードルは高い。栗田氏は「だからこそ、地域の人の力を引き出し、復興の推進力となるようにさまざまなアイデアを出し続けていきたい」と長期戦を覚悟する。
◇世田谷でのワークショップ
11月24、25日に東京都世田谷区の東京都市大学で開かれた「建築100人展・2012」には、久之浜大久地区復興支援チーム結の小澤洋平氏が参加し、ワークショップで使った地図を転写した机などを展示した。被災地の中だけにとどまらず、地域を超えて若手建築家、学生にサポートの輪が広がろうとしている。
まちづくりサポートチームは今後、年明けにも再度ワークショップを開き、提案の具体化に向けた作業を進める。
建設通信新聞(見本紙をお送りします!)2012年12月6日6面
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