わが国で初めて千葉大学が参加した「ソーラー・デカスロン・ヨーロッパ2012」の成果報告会が15日、千葉市の同大学西千葉キャンパスで開かれた=写真。今大会は8月31日から10月5日までスペイン・マドリードで開かれ、千葉大は次世代太陽光住宅「おもてなしハウス」で参加し、12カ国19チーム中15位という結果だった。学生幹事を務めた田島翔太さんは、反省点として、プレゼンテーションに対する準備不足と方法の差、高得点を取るべき項目で得点を取れなかったことを挙げ、2014年にフランスで開かれる本大会への再チャレンジに強い意欲を示した。
ソーラー・デカスロンは、産学が連携し、学生が主体となって進める大学間競技大会。世界各国の大学が「2人家族の生活に必要なエネルギーのすべてを太陽光発電でまかなう住宅を実際に建設」して提案内容を競うもので、大会期間中に、▽建築▽建設工学▽エネルギー効率▽電気エネルギーの収支▽快適条件▽機能▽コミュニケーションと社会性▽工業化と市場化▽革新性▽持続可能性--の10項目の総合得点で順位を決める。
◇再チャレンジ支える
成果報告会では、千葉大の齋藤康学長が「審査は満足のいくものではなかったが、いい経験になった。学生からのもう一度チャレンジしたいという言葉は勇気を与えてくれたし、支援していかなければならないと考えている」と述べた。田島さんは「領域横断、分野横断で一つの目標に向かってチャレンジできたことが大きな成果の一つだと思う。また、千葉大学として参加したが、企業の方々のご支援もいただき産学連携による日本のチームとして戦えたとも思っている。いろいろな経験、成果を得ることができた」とあいさつした。
引き続き詳細な報告が行われ、千葉大の「おもてなしハウス」の性能は「全チームの中でも高い水準を保っていた」一方で、建築計画や産業化、イノベーションで思っていたとおりの評価を得られなかったことなどが説明された。田島さんも「イノベーションの項目は点数の付け方が分からないところがある」と戸惑いがあったという。
また、審査委員からの、「日本の伝統的な住宅から特別な改善は認められない」「市場にある設備システムの利用(汎用性はあるが革新性に乏しい)」「日本特有の形、材料は考えを改めるべき」などのマイナス評価、「優れた構造システム(輸送と施工に適したパネル工法)」「水田・緑化への注水利用(計画)に対する評価」「『おもてなし』の概念への高い関心」などのプラス評価が報告された。
◇次回への課題
栗生明教授とともにチームの代表を務めた川瀬貴晴教授は、「今回の大会は前回までと異なり、新技術の開発、アイデアが評価される大会だった。われわれは前回までの大会を踏まえて日本の既存の技術を持っていったが、他国はこの大会のために開発した技術で参加してきた」ことなどを説明しながらも、参加の成果として、▽参加学生の教育・訓練▽産業界・社会との交流▽開催地などでの省エネ住宅の広報▽省エネ技術などの開発--を挙げた。
また、評価結果については「ライフスタイルの違いが評価にも表れた(生活文化、乾冷と蒸暑)」「参加チームが重視した視点の違いが出た(完成度とアイデア)」「準備不足の面があり省エネを徹底的に優先していればよかった(電圧などの違いから十分なシステムチェックができなかった)」とし、その上で、▽コンセプト作りに十分な時間をとる(欧米の省エネ住宅の動向を調査し、審査員にうける内容に)▽プレゼンテーション準備に時間をかける▽ルール担当者を置き、強力な権限をもたせる(大会期間中に重要な部分でのルール変更あり、それをチームに周知させる必要がある)--を課題とした。
今回の大会で総合1位に輝いたのはフランスのチームで、10項目中、建築計画、機能性、快適性、革新性の4項目で1位を獲得した。
建設通信新聞(見本紙をお送りします!)2012年12月20日2面
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