プレゼンに望む犬飼氏 |
犬飼氏は、羽田空港再拡張事業のうちD滑走路の設計でベントレー・システムズの「SACS(サックス)」を有効活用した事例を報告した。プレゼンで容赦ない質疑の嵐からようやく解放されたところだった。つまり、それほどまでに各国から高い関心を集めたプレゼンだったのだろう。
◇羽田D滑走路 影の立役者「SACS」
SACSは、海洋構造物に求められる各種解析などを効率的に行うシステムで、ベントレーが力を入れている製品の1つ。実は、新日鉄住金エンジが最優秀賞を受賞した海洋エンジニアリング部門は、今回からビー・インスパイアードに新設された部門だ。
同社は、D滑走路の主要部材であるジャケットの疲労解析・設計にSACSを使った。海上の滑走路は、飛行機の離着陸による荷重に加え、波浪などによる疲労も解析しなければならない。SACSは、短時間で疲労解析を行ってくれる。
海洋事業部海洋設計技術部鋼構造設計第一室に所属する犬飼氏は、「SACSの導入によって、時間、マンパワー、コストが削減できた。感覚的には(疲労解析などの)仕事が3分の1程度に軽減された印象だ」と語る。D滑走路では計189のジャケットを組み合わせているが、このうち9つをモデル化している。
ジャケット構造に関しては合計で4万カ所以上の疲労解析を行う必要があったが、SACSはそれらを短時間で自動的に算出。この結果、設計期間を2カ月短縮でき、コスト削減効果は500万円に達した。犬飼氏は「本当に欲しい情報を優先的に抽出してくれる」と、かゆい所に手が届くアウトプット手法やインターフェースの秀逸さを評価する。
◇ソフトウエアを使い倒す
一方、ベントレーで海洋エンジニアリング部門を束ねるクラーク・マクドナルド氏は新日鉄住金エンジの取り組みについて、「革新性があり、ソフトを賢くクリエイティブに使っている。かつてない使い方ではないか」と話す。
世界各国で洋上風力発電や海洋資源開発が加速しているため、SACSの販路は拡大しつつある。マクドナルド氏は「ユーザーの多様なニーズを踏まえ、さまざまな構造物に対応できるようにしていきたい。最近は洋上風力発電や、より深海部に対応したニーズが増えている。今後はさらに効率を高めて、費用対効果の面でも貢献していきたい」と意気込む。
最新のバージョン5・5では、洋上プラットフォームなどの挙動予測を高精度に可視化する機能などを盛り込んだ。ユーザーからの改善要望を踏まえたバージョンアップも抜かりない。
建設通信新聞(見本紙をお送りします!)2012年12月12日12面
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