連邦政府インフラストラクチャー委員会委員長
ロッド・エディントン卿
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豪日経済委員会インフラ小委員会委員長 ボブ・サイドラー氏 |
サイドラー氏 これまで日本と豪州は、農業や資源の分野では強い絆を保ってきた。しかしこれらはGDP(国内総生産)の1割ほどに過ぎない。残りの9割を占めるサービス業などの分野にも、強い絆を拡大したい。
--なぜインフラ分野なのか サイドラー氏 インフラ分野を選んだのは需要があるからだ。先進国は、新規整備が必要なインフラに加え、維持管理も必要だ。しかし国や自治体に予算はない。豪州には、建設、設備、施設管理、アドバイザリー、ファイナンスなど世界に通用するPPPのノウハウがある。インフラ分野での協力は、他産業にも協力の可能性を広げる。
◇豪州30年の失敗と成功共有
--日本のPPPについて サイドラー氏 日本のPFIシステムは、民間企業が参入し利益を出せるような形式になっていない。事業も建設コスト中心ではなく、サービスを買うという制度に変えるべきだ。制度が変われば外資の参入は進む。
現在、日本の機関投資家は、資産の0.4%をインフラ投資に振り向けているが、豪州では5%から10%を振り向ける。日本の機関投資家ですら国内インフラに投資できないのに、外資は投資できない。
プロジェクト規模も、日本は1億ドル程度、一方豪州では10億ドル以下のものはめずらしい。なぜそうなのか自問してほしい。
豪州政府は30年間で民間との協力体制を学んできた。PPPの最後の“P"はパートナーシップという一番重要な意味を持つ。パートナーシップは、官民が利益を分け合い、信頼がなければならない。
豪州もかつては日本と変わらない状況だった。だからこそ、われわれの経験を伝えたい。
◇利益出すPFIへ変革必要
ニュー・ロイヤル・チルドレンズ・ホスピタル |
--政府と民間の関係について エディントン卿 信頼関係が必要だ。豪州政府は民間に所有権を移転する。私が子どものころは、航空、上下水道、電力などインフラ資産は政府のものだったが、現在は民間によって運営されている。政府は、施設の運営にかかわる安全基準のチェックが務めだ。民間に所有が移ることで効率的な運営が可能になる。政府にもはや所有や運営する税収はない。医療、教育、福祉、年金、国防など、やらなければならないことが山積している。
サイドラー氏 豪州では民間の力を利用して革新的な技術やサービスを提供する。インプット型でなくアウトプット型のスペックに移行している。日本は、建物のスペックにこだわるが、豪州では目的となるアウトプットを指定する。メルボルンのニュー・ロイヤル・チルドレンズ・ホスピタルの例では、民間の提案で病棟をナースステーションから効率的に見られるよう十字型の配置にし、小児患者の親が宿泊するホテルも併設している。ホテル収入も見込めるので、収益性も上がっている。
◇日豪で協力体制構築へ
--豪州での官民関係は エディントン卿 連邦政府にインフラストラクチャー・オーストラリアという諮問機関がある。議長は民間、委員は官民半々の人数で構成している。機関は、政府に対して整備インフラの順位付けや投資的判断、ファイナンスなどのアドバイスを行う。こうした諮問機関は州ごとにもあり、英国や米国にも存在する。民間と政府が信頼感とともにイニシアチブを構成している。
--日豪での協力体制とは サイドラー氏 協力関係は3種類ある。(1)日本企業による豪州への参入(2)豪州企業の日本への参入(3)日豪双方でアジア市場に参入することだ。豪州には日本企業を阻害する障壁はない。われわれは日本に指図はしない。失敗や成功を共有し、長年の友人として協力関係を築きたい。今後、日本政府や経済界とともに、この国が変化していくことを期待している。
◇略歴
ロッド・エディントン卿
(Sir Rod Eddington)オックスフォード大卒。豪日経済委員会委員長。キャセイ・パシフィック航空、アンセット航空、ブリティッシュ・エアウェイズなどのCEOを歴任。現在はJPモルガン・オーストラリア&ニュージーランドの非常勤会長。インフラへの投資や保有についてアドバイスする連邦政府諮問機関「インフラストラクチャー・オーストラリア」の委員長を務める。
ボブ・サイドラー氏
(Bob Seidler)日本で最初のオーストラリア人登録弁護士。豪日経済委員会インフラ小委員会委員長で、豪州最大手ゼネコンのレイトン・ホールディングス取締役、レイトン・アジア会長。日本駐在中には、通産省の輸入諮問委員会委員も務めた。
建設通信新聞(見本紙をお送りします!)2013年3月11日
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