2013/03/09

【建築】S造でも木造に見える構造材 川田工業の木質ハイブリッド集成材

川田工業は、H形鋼に木材集成材を被覆した「木質ハイブリッド集成材」を使った国内最大規模の建物を施工した。木質ハイブリッド集成材を柱と梁の両方に使用した初めてのケースだったこともあり、「現場では多くの課題が出て、手探りで対策を講じた」(同社)という苦労があったのも事実だ。今後、木質系部材のさらなる普及が見込まれることから、同社はいくつかの改善策を提案している。
 この工事は、ポラテック本社ビル「ウッドスクエア」新築工事(埼玉県越谷市)。延べ約6500㎡の規模で、昨年2月に竣工した。構造形式は鉄骨造となるものの、内観は木造建築のように見えるのが特徴だ。グッドデザイン賞も受賞している。


H型鋼にカラマツの集成材で被覆する
◇全国3例目の大臣認定

 1時間耐火の大臣認定を得た木質ハイブリッド集成材の適用は、全国で3例目。今回は初めて柱と梁の両方に適用し、計600本以上を施工した。今回、柱と梁の被覆に使ったのは厚さ60mm以上のカラマツ集成材。柱は4辺を被覆し、梁はスラブが載る1辺を除いて被覆した。限られた工期の中、「部材製作の工程は非常に厳しかった。工程管理と品質管理には最も注意を払った」(同社)という。今回の施工経験を踏まえ同社は、集成材の製作や施工で生じる誤差を吸収する調整しろを設けるよう提案している。
 実際、施工段階ではいくつかの課題に直面した。鉄骨接合部の被覆は現場で行う必要があったものの、厚さ60mmのままでは接合部に段差が生じてしまう。設計者のジェイアール東日本建築設計事務所が日本建築センターと相談して最小かぶり厚さを36mmに決め、現場でボルトの締め付け方法なども工夫した結果、無事この課題をクリアできた。

◇フラットデッキに工夫

 フラットデッキの設置にも工夫が求められた。主に集成材による被覆部でデッキを受ける形となるため、集成材がはく離するおそれがある。対策として、デッキのたわみを減らすため小梁をサポート材で支えた上で、小梁端部と大梁集成材のすき間に木製のくさびを挿入して鉄骨と集成材とのはく離を抑えた。
 また、フラットデッキの下にはリブが突出しており、梁接合部に集成材を被覆する際に干渉する。このため、サポート材でデッキを受けて施工スペースを確保。スラブ完成後にサポートを撤去して被覆した。デッキの改善策として同社は、ファブデッキが有効になるとみている。「リブの突出がないため、接合部の干渉問題がなくなる」ためだ。
 木材に特有な課題の1つに汚れがある。コンクリートのアルカリがシミをつくる。この対策として、梁の天端にはセメントの漏れを防ぐためのテープを取り付けたほか、コンクリ打設中は垂れてきたセメントを水洗いした。雨による汚れ防止にはビニール養生を採用。最終的に落とせなかったシミは、木材のシミ抜き剤で落とした。汚れ対策については、雨に濡れないラッピング養生や水をはじくワックス塗布などの手法も提案している。
建設通信新聞(見本紙をお送りします!)2013年3月6日

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