鹿島・青木あすなろ建設JVが栃木県小山市で施工中のコマツ小山グリーンタウン独身寮新築工事。「現場で火(溶接)を使うか、使わないかの違いは大きい」と強調する松井友紀所長は、常に火災リスクへの対応を心掛けている。この現場で試みるのが、アルミサッシを躯体に固定する際の非溶接化だ。YKKAPが開発した工法を全面的に取り入れた。
工法を取り入れたコマツ小山グリーンタウン独身寮新築工事 |
通常は、躯体に埋め込んだアンカーと、サッシ枠組みに取り付けたアンカーを溶接作業によって固定する。つなぎ材に鉄筋を使うため、溶接時にサッシの位置が微妙にズレたり、枠組みが反ってしまう恐れもあり、作業員には熟練の技が求められる。
一般的な溶接では反りが出ることがある |
樹脂は専用アンカー内に注入するだけ |
◇火災リスクなくし健康配慮
そもそも一般化している溶接作業だが、火災の発生する危険性はゼロとは言えない。鹿島JVにとっても「居室には断熱材を使うため、少しでも引火の危険性をなくしたい」(菊地章工事課長)という思いがあった。現場では壁下地の軽量鉄骨(LGS)にも非溶接の試みを採用する徹底ぶりだ。サッシの取り付けでは、全体の7割を占める約200カ所を非溶接で対応することにした。
YKKAPの非溶接工法は、高強度の樹脂剤を使ってサッシを固定する。躯体側に打ち込んだ打鋲(だびょう)と、サッシ枠組みに取り付けた専用アンカーを合わせ、その中に樹脂剤を注入するだけの手軽さだ。樹脂剤は補強筋や手摺りボルトなどの接着アンカー用として市販されており、冬場でも注入後1時間程度で硬化する。
溶接固定に比べ工数が少ない上、打鋲は空気圧力の打ち込み機で行い、作業時の電源使用もない。溶接ヒュームなど有害物質の発生もなく、環境と健康に配慮している。樹脂注入の専用アンカーを使うため、狭い場所の固定には溶接にやや分があるものの、躯体とサッシの間に25mmの幅があれば十分に作業できる。
◇鹿島関東支店の改善事例候補に
YKKAPによると、非溶接工法の採用現場は現時点で330件に達する。全体の65%はマンション工事などの住居系が占めている。商品企画部PJ系ウインドウCW商品室室長の宇田川敏規氏は「2011年1月の営業開始から着実に増えているが、まだ全体の1割にも満たない状況。13年度末までには2割程度まで引き上げたい」と意欲的だ。
ネックになっているのはコストだ。非溶接工法の利点を実感している松井所長も「他の現場で使うには、溶接と同じコストで提供してもらえるかがポイント」と本音を語る。作業性を考慮した場合には「環境によって違いが生じる樹脂剤注入後の硬化時間を厳密に明確化してほしい」とも注文をつける。
鹿島の関東支店では、この現場の成果を踏まえ、社内の改善事例発表の候補として非溶接工法の試みを推薦する方針だ。「強度や品質に加え、安全面でもプラス。新築工事だけではなく、居ながら施工の改修工事にも使えそうだ」(松井所長)。6月からは同敷地内で、5階建て延べ約5200㎡の2期工事がスタートする。そこでも非溶接工法は採用される予定だ。
建設通信新聞(見本紙をお送りします!)2013年3月13日
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