BIM(ビルディング・インフォメーション・モデリング)が急速な広がりを見せたこの2年間、設計事務所やゼネコン、メーカーなどのBIM担当者が、最新情報や日ごろの悩み、アイデアを共有している場がある。建築技術者集団のシェルパ(名古屋市)が毎月第3金曜日に東京都中央区の同社東京オフィスで開催している「Open BIM Cafe」だ。
毎回、2人のゲストによるセミナーと、参加者全員が立食形式で酒を片手に意見交換をする「パワーディスカッション」の2部構成で、2月までに22回を開き、5月には3年目に突入する。
セミナーでは、これまでに延べ38人が講演した。スピーカーは実力派ぞろい。「実力」とは、つくるモデルの見た目のすごさではない。
「共通して言えるのは、BIMを使って暗黙知を見える化しているということだ」
シェルパの高松稔一代表は感心する。BIMの肝は「I」つまり情報であり、「I」は「愛」にも通じる。建物のエンドユーザーのことを思って、専門家が従来は表現し得なかった頭の中の情報をBIMで伝える。そうした本質的な取り組みの発表が多いという。
講演者は、カフェのような空間でマイクを使わず肉声で語りかける。親密な雰囲気だから話せる苦労話やこぼれ話などの「ここだけの話」が参加者の人気を呼んでいる。
「誰もが知りたい情報は、肉声でしか聞けないものだ」(高松代表)。
Cafeの参加者は、各回30人程度。毎月第1営業日に専用サイトで募集すると、最短4時間で応募が定員に達する。これまでに延べ約660人が参加した。「BIM」に興味を抱く発注者や、建設業との連携も検討する異業種の参加も目立ってきた。
建設プロジェクトの川上から川下にかかわる人が集まるが、取引の話にはならない。発注者も受注者も、重役も新人も、普段会えない者同士が、普段できない話に夢中になり、花が咲く。
「本当に皆さんが楽しそうにしていただけるので、やりがいがある。でも、皆さんの将来のビジネスの芽は育っているとも信じている」と、裏方を務める今枝睦二プロジェクトリーダーはほほえむ。
高松代表にとっては、理想の場だった。「肩書きや年代にとらわれずフラットに語り合える場が必要だと思った。自分がこの景色を見たかっただけかも知れない」
顧客目線の取り組みの共有、異業種連携、フラットな関係--。こうした場の実現も、建築業界の一つのイノベーションなのかもしれない。
専用サイトはhttp://www.sherpa-net.co.jp/cafe/
建設通信新聞(見本紙をお送りします!)2013年2月27日 14面
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