三方良しの公共事業推進研究会新潟支部(小野貴史支部長)の総会が18日、新潟市の新潟県建設会館で開かれ、取り組み事例の発表やパネルディスカッションが行われた。事例発表では各社それぞれに工夫した個性的な取り組みが紹介され、受発注者が一体となって情報共有などに取り組んでいるのが特徴の“新潟三方良しスタイル”は取り組み開始から2年で、さらに進化を遂げていることが明らかになり、ユーモアを交えながら自在で楽しげな各社のプレゼンテーションもあってか、会場には驚きや感嘆の声が上がっていた。
総会には会員のほか県内外の建設企業、北陸地方整備局や新潟県土木部などの行政関係者など約120人が参加。小野支部長に続いてあいさつした野田徹北陸整備局長は工程管理について「ここが肝(クリティカル)だということを受発注者が互いに認識することが大切だ」と述べ、工程に関する官民の情報共有に力を入れている同支部の三方良しの取り組みに「時宜を得たものであり、ぜひ加速してほしい」と期待を寄せた。
高橋猛県土木部長は公共工事の受発注者の関係を夫婦になぞらえ、 「仮面夫婦ではなく、 真の夫婦であれば、それを見て育つ子ども (地域社会)も公共事業をきちんと評価し、結果、 担い手確保にもつながっていく」と三方良しの取り組み意義を強調した。
事例発表ではまず、県土木部監理課の担当者が2年前から始めた同部の取り組み経緯を説明。実施したモデル工事では平均して工期が約1カ月短縮でき、同じく工事成績も80点以上となったとして「効果がある(ことが検証できた)。引き続き、企業と連携し、できる範囲で着実に推進したい」と述べた。県の村上地域振興局も県建設業協会の支部会員と共同で行った試行工事を紹介。週間工程の受発注者での共有やワンデーレスポンス、工事予定表の住民への公開などに取り組んだ結果、工期や組織内の関係活性化に好結果が出たことを報告。「理論を理解しつつも、理論にこだわりすぎずに今後も進めたい」とした。
続いて企業4社がそれぞれの取り組みを発表。大島組は「発注者との絆」「地域住民からの信頼」を主眼に、発注者と定期的に工程会議や工程打ち合わせを実施していることや住民向けの現場見学会の開催、 かわら版の発行などで積極的に情報発信した結果を紹介。「住民は現場に興味を持っているが、 旧来の情報発信方法では伝わらない。見える化が必要だ」と総括した。
巴山組は官民一体となって勉強会やワークショップを行ったことの重要性を指摘。ワークショップでは、現場条件などを踏まえて担当者が自分の言葉で工事目的を書き出して整理したODSC(目標すり合わせ)といわれるシートの作成作業、工程にあらかじめ織り込んでいる余裕を削り取り、工期を短縮する「サバ取り」といわれる作業を発注者と共同で行ったことがポイントだと強調した。特にサバ取り工程表に、発注者側のスケジュールも入れ込んだことが極めて大きな効果があったと指摘した。
大陽開発も発注者との情報共有と、町内会など地域への広報を重視して取り組んだと説明。ただ、課題として「ODSCシート」などの用語が一般的でなく、住民目線でないことを指摘。先例にこだわることなく、定型化を排して柔軟に取り組んでいく必要があると訴えた。また、ODSCシートに書き出す工事目的などがマンネリ化してしまうことも指摘。工事や現場事情などに対応した態勢や発想が求められるとした。
小野組はODSCシート作成を全土木現場で導入していることを紹介し、その現場担当者以外に社内のベテランや他部署の社員、若手技術者など10人程度を集めて着工前の段階で開くODSC会議の導入が、大きな効果を発揮していると説明。「部外者の目やベテランの知恵を集めることで短時間で現場の問題点が見えてくる。若手の育成にもなる」とメリットを強調した。今後は発注者と協働で工期短縮に取り組みたいとした。
事例発表後には、三方良しの取り組みの先駆者である砂子組(北海道)の社長で同研究会の理事長も務める砂子邦弘氏や新潟県庁職員の阿部信隆氏らによるパネルディスカッションが行われ、今後の三方良しの展開の可能性について、急激に変化している経済社会の先行きを見据え、三方良しの基本理念を原点としつつも概念を拡大・深化させ、定型的な思考を排しながら新しい建設生産システムへのイノベーションに受発注者が早急に取り組んでいく必要性が指摘された。
建設通信新聞(見本紙をお送りします!)
小野貴史支部長 |
野田徹北陸整備局長 |
高橋猛土木部長 |
事例発表ではまず、県土木部監理課の担当者が2年前から始めた同部の取り組み経緯を説明。実施したモデル工事では平均して工期が約1カ月短縮でき、同じく工事成績も80点以上となったとして「効果がある(ことが検証できた)。引き続き、企業と連携し、できる範囲で着実に推進したい」と述べた。県の村上地域振興局も県建設業協会の支部会員と共同で行った試行工事を紹介。週間工程の受発注者での共有やワンデーレスポンス、工事予定表の住民への公開などに取り組んだ結果、工期や組織内の関係活性化に好結果が出たことを報告。「理論を理解しつつも、理論にこだわりすぎずに今後も進めたい」とした。
続いて企業4社がそれぞれの取り組みを発表。大島組は「発注者との絆」「地域住民からの信頼」を主眼に、発注者と定期的に工程会議や工程打ち合わせを実施していることや住民向けの現場見学会の開催、 かわら版の発行などで積極的に情報発信した結果を紹介。「住民は現場に興味を持っているが、 旧来の情報発信方法では伝わらない。見える化が必要だ」と総括した。
巴山組は官民一体となって勉強会やワークショップを行ったことの重要性を指摘。ワークショップでは、現場条件などを踏まえて担当者が自分の言葉で工事目的を書き出して整理したODSC(目標すり合わせ)といわれるシートの作成作業、工程にあらかじめ織り込んでいる余裕を削り取り、工期を短縮する「サバ取り」といわれる作業を発注者と共同で行ったことがポイントだと強調した。特にサバ取り工程表に、発注者側のスケジュールも入れ込んだことが極めて大きな効果があったと指摘した。
大陽開発も発注者との情報共有と、町内会など地域への広報を重視して取り組んだと説明。ただ、課題として「ODSCシート」などの用語が一般的でなく、住民目線でないことを指摘。先例にこだわることなく、定型化を排して柔軟に取り組んでいく必要があると訴えた。また、ODSCシートに書き出す工事目的などがマンネリ化してしまうことも指摘。工事や現場事情などに対応した態勢や発想が求められるとした。
小野組はODSCシート作成を全土木現場で導入していることを紹介し、その現場担当者以外に社内のベテランや他部署の社員、若手技術者など10人程度を集めて着工前の段階で開くODSC会議の導入が、大きな効果を発揮していると説明。「部外者の目やベテランの知恵を集めることで短時間で現場の問題点が見えてくる。若手の育成にもなる」とメリットを強調した。今後は発注者と協働で工期短縮に取り組みたいとした。
事例発表後には、三方良しの取り組みの先駆者である砂子組(北海道)の社長で同研究会の理事長も務める砂子邦弘氏や新潟県庁職員の阿部信隆氏らによるパネルディスカッションが行われ、今後の三方良しの展開の可能性について、急激に変化している経済社会の先行きを見据え、三方良しの基本理念を原点としつつも概念を拡大・深化させ、定型的な思考を排しながら新しい建設生産システムへのイノベーションに受発注者が早急に取り組んでいく必要性が指摘された。
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