2014/08/02

【素材NOW】ビル窓、ドア取っ手も「抗菌仕様」 高齢者住宅にも広がるニーズ

YKKAPがビル窓やドアの操作部品に抗菌塗装を施したのは2年前。商品企画部ビル商品企画グループ長の安田浩氏は「業界初の試みであったが、まさかの反響に正直驚いている」と苦笑いする。商品化のきっかけは、設計者からの何気ない問いかけだった。抗菌仕様の取っ手やハンドルが選択された2013年度の実績は件数ベースで5倍もの大きな伸びを記録。「これは、潜在的に大きなニーズがある」と、今ではその手応えをしっかりと感じている。写真は96%が抗菌仕様に対応するビル窓『EXIMA』シリーズ。


 病院などのビル建築向けにも抗菌仕様の取っ手がほしい。こうした設計者からの要求をきっかけに商品化に乗り出したが、一から技術開発に乗り出すような苦労はなかった。過去に住宅浴室ドア向けに抗菌仕様の商品を出したことがあり、「眠っていた技術を復活させただけ」に過ぎなかった。
 ただ、商品化には抗菌性能の第三者評価が必要で、外部試験機関の試験を経て、日本建材・住宅設備産業協会が実施するJISに基づいた抗菌性能基準仕様登録制度の認定を受けた。部材や材質によって塗装が異なるため、クレセント、ハンドル、引き手など種類ごとに評価を取得した。
 同社の採用した銀イオンによる抗菌効果は、大腸菌、ブドウ球菌、サルモネラ菌など食中毒を引き起こす細菌の繁殖を抑える。試験では24時間後に細菌数が1%以下に減少する性能基準をクリアした。インフルエンザなどのウイルスやカビへの効果はないものの、衛生面の効果が大きいことを立証した。
 抗菌仕様はオプション商品として、販売価格に1-2%上乗せするだけ。「清潔感という顧客ニーズはわれわれが思っている以上に重要視されている。抗菌塗装によるコストアップの幅も少なく、設計者には顧客の説明を得やすいのではないか」と、安田氏は分析する。13年度の採用数は前年度実績の5倍に膨れあがったが、まだ出荷数量全体の1%に過ぎず、「今後の伸びしろは大いにある」と期待をのぞかせる。
 採用割合は医療福祉系施設が50%を超え、教育施設やマンションへの割合も多い。その中でも、11年10月の法施行を背景に建設需要が顕著化しているサービス付き高齢者向け住宅(サ高住)市場には抗菌仕様のニーズが高いと考えている。サ高住向けには窓やサッシ関連の商品を充実させ、現時点で240点を超えるまでの商品アイテムを取りそろえている。

要望が強いオペレータハンドルへの抗菌仕様も準備中
抗菌仕様の採用件数はまだ全体の7%に過ぎないが、衛生面に対する高齢者層のニーズは大きい。同社はサ高住市場で13年度に16億円の受注を確保し、14年度には18億円、16年度には20億円規模まで拡大する計画を描いている。既に抗菌仕様を選んだ設計者のリピート率も高く、採用数のさらなる増加が期待できる。「抗菌仕様はサ高住開拓に欠かせないオプションになる」(安田氏)。
 ビル窓の基幹商品『EXIMA』シリーズでは、操作部品の96%で抗菌仕様を選択できる。要望が強いオペレータハンドルへの抗菌仕様も14年度内に商品化する計画で、ボリュームゾーンの商品ではほぼ全てに対応できるようになる。水回り商品では一般的な抗菌仕様だが、ビル用の窓やドアで展開するのは同社だけ。営業展開では商品グレードを引き上げる選択肢としても提案しやすく、ビル施設向けの抗菌ニーズがさらに広がれば、同業他社が追随する可能性もある。抗菌仕様の採用件数は14年度に入ってさらに高まりを見せており、13年度実績を1.5倍上回る状況だという。
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