各分野のスペシャリストによる“ドリームチーム”--。東北地方整備局が震災復興のリーディングプロジェクトに位置付けられた復興道路・復興支援道路に導入している「事業促進PPP」で10工区の民間技術者チームが、発注者に代わって地元協議などを行った回数は延べ約7000回に及ぶ。また、各分野のスペシャリストならではの“気づき”を踏まえた創意工夫などによって、工期短縮やコスト縮減を実現。通常では4年程度を要する事業化から工事着手までの期間を1、2年程度までに短縮させる原動力となった。事業促進PPPの取り組みと成果を紹介する。写真は田老北IC~岩泉龍泉洞ICの進捗状況。
事業促進PPPは、工事着手前の川上分野のマネジメントに民間活力・ノウハウを活用する全国初の取り組み。民間技術者チームは、発注者チームと連携しながら事業進捗管理や関係機関との協議・調整などの業務を推進。2011年度第3次補正予算で新規事業化した224㎞のうち、三陸沿岸道路を中心とする10工区・約183㎞に導入された。
民間技術者チームは、業務全体を統括する管理技術者1人と「事業管理」「調査設計」「用地調査」「施工」の各分野のスペシャリストである主任技術者4人、技術員3人程度からなる。
業務は簡易公募型プロポーザル方式で発注され、単体企業1社と23JVの計24者が参加した。全国初の試みで、復興貢献という意味合いが強い業務とあって参加企業の多くが「当社屈指の技術者を充てた」という。
“ドリームチーム”とも言える民間技術者たちが業務を開始したのは、12年6月。最大のミッションは、着工前の膨大な業務の実施とその工夫だった。
ことし2月までの約1年8カ月の間に10工区の民間技術者チームが、発注者に代わって協議や打ち合わせをした回数は延べ約7000回。具体的には測量・調査・設計などの業務360件に対する打ち合わせが約2200回、地元協議は約2500回、関係機関協議は約2300回だった。
特に設計などに対する打ち合わせでは、各分野のスペシャリストによる現場に適した指導を行うことで、質の高い成果が得られた。
また、地元協議の際もVR(バーチャルリアリティー)やパースなどを使い、複雑なインターチェンジ(IC)形状、家屋と道路の位置関係などを視覚的に分かりやすく説明し、協議の促進に寄与した。
さらに早い段階から地権者協議を実施し、用地買収前の埋蔵文化財試掘調査に対する同意を得て工事着手までの期間短縮を実現したほか、路線概要チラシや『工区だより』によるアカウンタビリティー(説明責任)の向上にも努めた。
地元・関係機関協議という業務を初めて担当した技術者も多かったが、「トップレベルの技術者たちは前向きで覚えるのも早かった」と発注者側からも評価の声が上がる。
こうした膨大な業務を迅速かつ着実に遂行する一方、事業の設計・施工段階における品質向上面などでも大きな役割を果たした。そのきっかけは、スペシャリストたちの“気づき”によるものが多い。
例えば、約35年ものトンネル工事の経験がある施工担当技術者が現地の電力線の太さを見て、当該区間で計画されている複数のトンネルを同時施工するには電力が足りないことに気づいた。
実際に必要な電力量を算定したところ、供給可能電力量より約700kW多いことが判明。このため、電力会社と事前協議し、工事発注前に需給仮契約を締結、スムーズな工事着手につながった。こうした取り組みがなかった場合、工事着手時期は約1年遅れたという。
また、別の施工担当技術者は、事業工程上のクリティカルとなる長大トンネルの工事発注に当たって、施工期間の短縮方策を提案。これを受けて発注者側が入札時の技術提案で「掘削期間の短縮」を求めたところ、機械の増設・能力アップ、大型機械の導入などにより、標準案に比べて約55%期間短縮するという提案が行われた。
量・質両面で絶大な効果を発揮し、異例のスピードでの整備を可能としている事業促進PPP。多くの犠牲と甚大な被害のもとで生まれたこの新たな手法は、東北の復興加速化だけでなく、今後の公共事業全体の推進にも大きく寄与しそうだ。
(写真提供・東北地方整備局)
建設通信新聞(見本紙をお送りします!)
事業促進PPPは、工事着手前の川上分野のマネジメントに民間活力・ノウハウを活用する全国初の取り組み。民間技術者チームは、発注者チームと連携しながら事業進捗管理や関係機関との協議・調整などの業務を推進。2011年度第3次補正予算で新規事業化した224㎞のうち、三陸沿岸道路を中心とする10工区・約183㎞に導入された。
民間技術者チームは、業務全体を統括する管理技術者1人と「事業管理」「調査設計」「用地調査」「施工」の各分野のスペシャリストである主任技術者4人、技術員3人程度からなる。
業務は簡易公募型プロポーザル方式で発注され、単体企業1社と23JVの計24者が参加した。全国初の試みで、復興貢献という意味合いが強い業務とあって参加企業の多くが「当社屈指の技術者を充てた」という。
“ドリームチーム”とも言える民間技術者たちが業務を開始したのは、12年6月。最大のミッションは、着工前の膨大な業務の実施とその工夫だった。
設計委託コンサルとの打合せ |
合同現地調査 |
特に設計などに対する打ち合わせでは、各分野のスペシャリストによる現場に適した指導を行うことで、質の高い成果が得られた。
岩泉龍泉洞ICのVR |
工区だより |
地元・関係機関協議という業務を初めて担当した技術者も多かったが、「トップレベルの技術者たちは前向きで覚えるのも早かった」と発注者側からも評価の声が上がる。
こうした膨大な業務を迅速かつ着実に遂行する一方、事業の設計・施工段階における品質向上面などでも大きな役割を果たした。そのきっかけは、スペシャリストたちの“気づき”によるものが多い。
例えば、約35年ものトンネル工事の経験がある施工担当技術者が現地の電力線の太さを見て、当該区間で計画されている複数のトンネルを同時施工するには電力が足りないことに気づいた。
実際に必要な電力量を算定したところ、供給可能電力量より約700kW多いことが判明。このため、電力会社と事前協議し、工事発注前に需給仮契約を締結、スムーズな工事着手につながった。こうした取り組みがなかった場合、工事着手時期は約1年遅れたという。
また、別の施工担当技術者は、事業工程上のクリティカルとなる長大トンネルの工事発注に当たって、施工期間の短縮方策を提案。これを受けて発注者側が入札時の技術提案で「掘削期間の短縮」を求めたところ、機械の増設・能力アップ、大型機械の導入などにより、標準案に比べて約55%期間短縮するという提案が行われた。
量・質両面で絶大な効果を発揮し、異例のスピードでの整備を可能としている事業促進PPP。多くの犠牲と甚大な被害のもとで生まれたこの新たな手法は、東北の復興加速化だけでなく、今後の公共事業全体の推進にも大きく寄与しそうだ。
(写真提供・東北地方整備局)
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